映画「パシフィック・リム」@シネマサンシャイン平和島
公開二週目土曜日の夕方。この劇場自慢のimm soundを採用した、imm3Dサウンドシアターには20名弱位の閑散とした客入りである。


映画の話
2013年、突然未知の巨大生命体が太平洋の深海から現われる。それは世界各国の都市を次々と破壊して回り、瞬く間に人類は破滅寸前へと追い込まれてしまう。人類は一致団結して科学や軍事のテクノロジーを結集し、生命体に対抗可能な人型巨大兵器イェーガーの開発に成功する。パイロットとして選ばれた精鋭たちはイェーガーに乗り込んで生命体に立ち向かっていくが、その底知れぬパワーに苦戦を強いられていく。
映画の感想
日本の怪獣、ロボット、アニメへの愛を感じる作品だ。日本であればアニメで描くスケールを、アメリカ映画は実写でやってのけた。冒頭に作品の世界観をニュース映像や記録映像などを使いダイジェストで説明して、一気に観客を本題となる2020年の世界へと放り込む。対怪獣ロボット・イェーガーに搭乗するのは兄ヤンシーと弟ローリーのベケット兄弟だ。怪獣ナイフヘッドの攻撃により弟ローリーの目の前で、兄ヤンシーが戦死するトラウマエピソードから物語はスタートする。怪獣ナイフヘッドの造詣は「ガメラ対大悪獣ギロン」
に登場する怪獣ギロンを彷彿させる造詣だ。そして物語はイエーガーのパイロットを辞めて、怪獣から攻撃を防ぐ防波堤の様な壁作りをしていたローリーが、再びイエーガーのパイロットに復帰し、日本人女性の森マコと共にイエーガーに搭乗し、怪獣との戦いが描かれる。
本作は地球を乗っ取ろうとする怪獣と、それを防衛する人型巨大兵器イェーガーの戦いをド迫力に描くが、その裏では怪獣との戦いを通して、イェーガーを操縦するパイロット自身が抱えるトラウマとの戦いでもある。兄を目の前で怪獣に殺されたローリーと、両親を怪獣に殺された森マコ。パイロット二人が脳を同調させてイェーガーを操縦する面白い設定だ。コックピットの中のパイロットの動きがトレースされて、そのままイェーガーの動作となる設定は、特撮ドラマ「ジャンボーグA」
が有名だ。そしてジャンボーグAの現代版が登場する「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」
に登場する巨大ロボット“ジャンボット”も、ロボット内の少年の動きがそのままトレースされて、ロボットの動きとなる設定であり、日本人観客にはお馴染みの設定なのが良い。
まぁ、それにしても実写+CGを使いロボット対怪獣の戦いを大迫力で描き出した作家のセンスは秀逸だ。今までは「トランスフォーマー」など、ロボット同士の対決であったが、本作はあえて台詞でも“怪獣”という呼び名を使い、怪獣とロボットの対決を真正面から描く。ロボットはあらゆる武器を使い、怪獣と戦うが、本能むき出しの怪獣はロボットの手を引きちぎり、パイロットが乗るコックピットに手を突っ込み引きずり出す。どう猛な怪獣の姿は日本製怪獣映画では描かれない残酷なものだ。戦いの舞台も海上、都市と怪獣映画でお馴染みの舞台設定もすばらしい。
その怪獣の造詣は「ウルトラマンA」以降の怪獣や、平成「ゴジラ」シリーズに登場する怪獣を思わせる造詣だ。最初に現れた怪獣ナイフヘッドは、どことなく日本の着ぐるみ怪獣を思わせる、皮膚のたるみも再現されていた。ロボットと怪獣のガチンコ勝負は、怪獣ファンには夢のようなシーンの連続であり接近戦の数々は、光線の対決に終始し観客を失望させた平成「ゴジラ」シリーズの特技監督を務めた川北紘一監督に見せてあげたいし、多くの特撮、アニメクリエーターは本作を見て「やられた」と思ったはずである。
作品はほぼパーフェクトな仕上がりであるが、いくつか不満点も残った。まず、カット割りが早すぎてせっかくの怪獣やイェーガーの造詣が判り辛い点と、イェーガーが基地から発進するシーンが無いのが残念であった。この辺は「サンダーバード」や、「ウルトラセブン」に登場するマシンの発進シーンの様な、ケレンミのある演出が欲しかった。イェーガーはあれだけ万能なロボットなのに、移動はヘリコプターに吊られた状態であり、大気圏からの落下にも防御機能が無いアンバランスなマシンである。そこがまた物語を盛り上げる設定なのも判るが、空を飛べるようになると完全なロボット兵器となるであろう。
日本人観客には森マコ役の菊池凛子と、その子供時代を演じた芦田愛菜の好演もうれしく、菊池に至っては堂々たる主演扱いには驚く。パイロット試験のシーンでは、怪我により降板してしまった「カムイ外伝」で披露するはずだったアクションも披露しながら、トラウマと戦い人間的に成長する森マコを好演した。
本作は日米二人の特撮映画の父にささげられている。一人はストップモーションアニメの先駆者レイ・ハリーハウゼンと、多くの昭和「ゴジラ」シリーズを監督した本多猪四郎だ。「シンドバッド」シリーズで知られるハリーハウゼンはデル・トロ監督が影響されたのは納得であるが、円谷英二ではなく本多猪四郎監督の名前には驚きとともに、感慨深い思いに浸ってしまった。確かに本作で怪獣が海から香港に上陸するシーンなどの音楽は、正に伊福部昭作曲「ゴジラ」の音楽に似たスコアで「『ゴジラ』の影響?」なんて思っていただけに、その答えがエンドロールの最後に明かされて一人で納得してしまった。多くの特撮映画ファンに見て欲しい作品であり、満足度は非常に高い。
imm3Dsoundについて
入場料金に+¥200を払う画面と音が最高レベルにチューニングされたプレミア館だ。ソフトレザー張りの客席に、横幅13.7mのスクリーンに、天井にまでサラウンドスピーカーが配置された劇場だ。画面の大きさはほどほどであるがクリアで鮮明だ。そして売りのサウンドは音圧が高く、音の移動感、鮮烈な音が劇場全体を覆いつくす最高のサウンドだ。映画終了時にはロックコンサート後のように「ピーン」と耳鳴りがするくらいの音響システムであった。割増料金を払っても損の無い劇場である。
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映画の話
2013年、突然未知の巨大生命体が太平洋の深海から現われる。それは世界各国の都市を次々と破壊して回り、瞬く間に人類は破滅寸前へと追い込まれてしまう。人類は一致団結して科学や軍事のテクノロジーを結集し、生命体に対抗可能な人型巨大兵器イェーガーの開発に成功する。パイロットとして選ばれた精鋭たちはイェーガーに乗り込んで生命体に立ち向かっていくが、その底知れぬパワーに苦戦を強いられていく。
映画の感想
日本の怪獣、ロボット、アニメへの愛を感じる作品だ。日本であればアニメで描くスケールを、アメリカ映画は実写でやってのけた。冒頭に作品の世界観をニュース映像や記録映像などを使いダイジェストで説明して、一気に観客を本題となる2020年の世界へと放り込む。対怪獣ロボット・イェーガーに搭乗するのは兄ヤンシーと弟ローリーのベケット兄弟だ。怪獣ナイフヘッドの攻撃により弟ローリーの目の前で、兄ヤンシーが戦死するトラウマエピソードから物語はスタートする。怪獣ナイフヘッドの造詣は「ガメラ対大悪獣ギロン」
本作は地球を乗っ取ろうとする怪獣と、それを防衛する人型巨大兵器イェーガーの戦いをド迫力に描くが、その裏では怪獣との戦いを通して、イェーガーを操縦するパイロット自身が抱えるトラウマとの戦いでもある。兄を目の前で怪獣に殺されたローリーと、両親を怪獣に殺された森マコ。パイロット二人が脳を同調させてイェーガーを操縦する面白い設定だ。コックピットの中のパイロットの動きがトレースされて、そのままイェーガーの動作となる設定は、特撮ドラマ「ジャンボーグA」
まぁ、それにしても実写+CGを使いロボット対怪獣の戦いを大迫力で描き出した作家のセンスは秀逸だ。今までは「トランスフォーマー」など、ロボット同士の対決であったが、本作はあえて台詞でも“怪獣”という呼び名を使い、怪獣とロボットの対決を真正面から描く。ロボットはあらゆる武器を使い、怪獣と戦うが、本能むき出しの怪獣はロボットの手を引きちぎり、パイロットが乗るコックピットに手を突っ込み引きずり出す。どう猛な怪獣の姿は日本製怪獣映画では描かれない残酷なものだ。戦いの舞台も海上、都市と怪獣映画でお馴染みの舞台設定もすばらしい。
その怪獣の造詣は「ウルトラマンA」以降の怪獣や、平成「ゴジラ」シリーズに登場する怪獣を思わせる造詣だ。最初に現れた怪獣ナイフヘッドは、どことなく日本の着ぐるみ怪獣を思わせる、皮膚のたるみも再現されていた。ロボットと怪獣のガチンコ勝負は、怪獣ファンには夢のようなシーンの連続であり接近戦の数々は、光線の対決に終始し観客を失望させた平成「ゴジラ」シリーズの特技監督を務めた川北紘一監督に見せてあげたいし、多くの特撮、アニメクリエーターは本作を見て「やられた」と思ったはずである。
作品はほぼパーフェクトな仕上がりであるが、いくつか不満点も残った。まず、カット割りが早すぎてせっかくの怪獣やイェーガーの造詣が判り辛い点と、イェーガーが基地から発進するシーンが無いのが残念であった。この辺は「サンダーバード」や、「ウルトラセブン」に登場するマシンの発進シーンの様な、ケレンミのある演出が欲しかった。イェーガーはあれだけ万能なロボットなのに、移動はヘリコプターに吊られた状態であり、大気圏からの落下にも防御機能が無いアンバランスなマシンである。そこがまた物語を盛り上げる設定なのも判るが、空を飛べるようになると完全なロボット兵器となるであろう。
日本人観客には森マコ役の菊池凛子と、その子供時代を演じた芦田愛菜の好演もうれしく、菊池に至っては堂々たる主演扱いには驚く。パイロット試験のシーンでは、怪我により降板してしまった「カムイ外伝」で披露するはずだったアクションも披露しながら、トラウマと戦い人間的に成長する森マコを好演した。
本作は日米二人の特撮映画の父にささげられている。一人はストップモーションアニメの先駆者レイ・ハリーハウゼンと、多くの昭和「ゴジラ」シリーズを監督した本多猪四郎だ。「シンドバッド」シリーズで知られるハリーハウゼンはデル・トロ監督が影響されたのは納得であるが、円谷英二ではなく本多猪四郎監督の名前には驚きとともに、感慨深い思いに浸ってしまった。確かに本作で怪獣が海から香港に上陸するシーンなどの音楽は、正に伊福部昭作曲「ゴジラ」の音楽に似たスコアで「『ゴジラ』の影響?」なんて思っていただけに、その答えがエンドロールの最後に明かされて一人で納得してしまった。多くの特撮映画ファンに見て欲しい作品であり、満足度は非常に高い。
imm3Dsoundについて
入場料金に+¥200を払う画面と音が最高レベルにチューニングされたプレミア館だ。ソフトレザー張りの客席に、横幅13.7mのスクリーンに、天井にまでサラウンドスピーカーが配置された劇場だ。画面の大きさはほどほどであるがクリアで鮮明だ。そして売りのサウンドは音圧が高く、音の移動感、鮮烈な音が劇場全体を覆いつくす最高のサウンドだ。映画終了時にはロックコンサート後のように「ピーン」と耳鳴りがするくらいの音響システムであった。割増料金を払っても損の無い劇場である。
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