映画「ドライヴ」@シネマート六本木

　映画レビューサイトCOCOさんの独占試写会だ。客入りは若干空席があるものの、会場となったシアター3はほぼ満席である。映画レビュアーさんたちの出席率の高さに感心する。
　　
　
映画の話
　天才的なドライブテクを武器に、昼は映画のカースタント、夜は強盗逃し専門の運転手をしているドライバー（ライアン・ゴズリング）。ドライバーはアイリーン（キャリー・マリガン）にひそかに思いを寄せていたが、彼女には服役中の夫スタンダード（オスカー・アイザック）がいた。ある日、服役から戻ってきたスタンダードがガレージで血まみれで倒れている姿をドライバーが目撃し……。

　映画の感想
　映画の設定はウォルター・ヒル監督「ザ･ドライバー」と同じ、プロの犯罪ドライバーの物語をベースに、隣人奥さんとの愛と、タランティーノ系の乾いたバイオレンスを融合した作品だ。本作は各メディアから“クール”と言う言葉で賞賛されているが、私は逆にその”クール"な演出に物足りなさを感じた。まず、ライアン・ゴズリング演じる主人公が何を考えているのか判らず感情移入が出来ない。

　　　以下ネタばれ注意

　作品は静と動を意識的に使い分け、主人公の仕事を動とすると、日常生活は静となり、淡々としたドラマが描かれるのだが、これが面白味が無い。ドラマの面白味は魅力ある主人公であれば物語を牽引する力があるが、本作の主人公からはそれを感じ取れない。おとなしく無口な主人公と対比するように、彼を取り巻く人物たちは饒舌だ。主人公と恋仲になる隣人一家、主人公の恩師となる自動車修理工の男など、皆主人公より饒舌である。

　そして異彩を放つのは悪の親玉を演じたアルバート・ブルックスであろう。ブルックスと言えば「タクシードライバー」で、主人公トラビスが執着する議員の選挙事務所で働く男であったり、「トワイライトゾーン」のオープニングで、ダン・エイクロイドとドライブする相方、「ブロードキャスト・ニュース」のレポーター役など、元々コメディアンだけに陽性なキャラクターを演じることが多い人物と認識していたが、本作では悪の親玉を悠々と演じていて驚いた。ブルックスの凄みのある演技とは反対にロン・パールマンが小悪党で影が薄い。

　さて物語に話を戻すと、お隣さんの服役中の夫が出所してきた事で物語が悪い方向に動き出す。お隣さんの夫が刑務所内で作った借金を返済する為に強盗をする事になり、主人公が強盗のドライバーを引き受けるが、罠にかかってしまう。ここから先は今までの淡々としたドラマが嘘のように、過激なバイオレンス描写が連続して描かれる。強盗失敗から始まる暴力描写はカーチェイスへ発展し、モーテルへの襲撃へと直接的な暴力描写がかなりエグイ。この辺は「ザ・ドライバー」のウォルター・ヒル監督も影響を受けたサム・ペキンパー監督の暴力描写を思い出しつつ、瞬間的な暴力描写はタランティーノ的かもしれない。

　暴力は始まったら止まらない。罠にはまった主人公は、自分を陥れた悪党を徹底的に痛めつける。ついに主人公の自宅アパートにまで現れた殺し屋をエレベーター内で惨殺する恐ろしい暴力描写がナイスである。しかし、主人公に逆にやられてしまった殺し屋の死体はどうなったのだろうか?どうも本作はフリを投げたら投げっぱなしで詰めが甘い。

　詰めの甘さは主人公の衣装にも現れる。殺しを重ね血まみれになった主人公の白いジャンパーは、シーンが進む毎に血の汚れが薄く綺麗になり、物語に本腰が入ってきた私の気持ちも、血糊の色落ちと比例するように離れてしまった。面白そうな題材だけに期待をして見たが、オープニングの仕事ぶりと、後半の暴力描写に見るものがあるが、全体的には平板な仕上がりに肩透かしを食らった。

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Comments

[rose_chocolat]

masalaさんこれイマイチだった？
割とドンパチ好きなmasalaさんなのに珍しいわ。
ドンパチの質がだめ？　笑