「シン・ゴジラ」@TOHOシネマズ六本木

 公開初日昼の回。このシネコン一番大きいスクリーン7には、お子さんから大人まで300名弱位の客入りだ。

   



   映画の話
 東京湾アクアトンネルが崩落する事故が発生。首相官邸での緊急会議で内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)が、海中に潜む謎の生物が事故を起こした可能性を指摘する。その後、海上に巨大不明生物が出現。さらには鎌倉に上陸し、街を破壊しながら突進していく。政府の緊急対策本部は自衛隊に対し防衛出動命令を下し、“ゴジラ”と名付けられた巨大不明生物に立ち向かうが……。

   映画の感想
 戦争や震災をゴジラに置き換えて、政府の危機管理をシミュレーションした物語が上手い。悪名高い樋口真嗣監督作品とハードルを思いっきり下げて見たが、冒頭から小気味よい描写の連続に驚く。これはきっと総監督・庵野秀明の手腕なのか?やたら文字情報が多いのも驚く。ドラマの描き方は特異な物で、何処かアニメ的と言うのか独自のリズム感が心地良い。

以下ネタバレ注意

 ゴジラの描き方も面白い。最初は海上にバカでかい水柱で表し、次に尻尾のみ、次に大田区の呑川を上って来るのだが、間抜けな形状の巨大生物が映り、まさかの変形してお馴染みのゴジラになる観客の意表を付いた演出にしびれる。冒頭からサービス満点な構成が良い。ゴジラが登場するまで1時間近く掛かったUS版「GODZILLA ゴジラ」(14)とは大違いの構成に作家たちのやる気を感じ取った。

 本作のゴジラはかなり進化していて、今までのゴジラは口から吐く放射能火炎だけであったが、本作はメカゴジラ並の光線攻撃を仕掛ける。口、背びれだけではなく尻尾からまで光線を発射する。ミサイル攻撃も跳ね返す強靭な皮膚まで兼ね備え、ゴジラ史上最強と言える生物に進化した。

やはり日本製ゴジラは良い!何と言っても普段見慣れた風景が、ゴジラの破壊により別世界へと変貌していくカタルシスがたまらない。私の地元の品川区北品川駅品川神社も登場し京急線が宙に舞う。そしてゴジラ生誕の地ともいえる、「ゴジラ」(54)でゴジラが日本本土に初上陸した聖地の八つ山橋で、自衛隊のヘリコプター部隊とゴジラがにらみ合いするシーンに先人へのオマージュを感じ取った。

 それにしても、本作は政府の描き方がブラックだ。総理を含め閣僚たちの無能ぶりに対して、主人公・矢口をはじめ、閣僚を支える部下たちが優秀な人材が揃い、総理と閣僚死亡後は核攻撃推進する外国からの指示をしり目にヤシオリ作戦まで導く。

  アメリカから原爆攻撃を受けた広島、長崎を持つ日本だけに、核攻撃を避けた人力+アナログ的な作戦が面白く、東京駅で活動停止したゴジラに対して2台の新幹線による爆弾攻撃に加え、近隣ビル爆破でゴジラを下敷きにして、凝固剤投入、更に爆弾満載のJR在来線軍団がゴジラに突っ込む姿は、ゼロ戦による特攻魂と重なる。更に新幹線や在来線のミニチュアワークは私の大好きな「新幹線大爆破」(75)までを思い出した。もう、あまりにも素晴らしいシーンの連続にニヤニヤが止まらない。

 ヤシオリ作戦の指令本部となる科学技術館屋上の背景には、「太陽を盗んだ男」(79)でロケ地に使用されて、クライマックスに沢田研二菅原文太が屋上から転落した、星型の外壁が特徴的な科学技術館本体がバッチリ写っている。ロケーション的にいささか間違っている様にも感じるが、偶然なのか、オマージュかは不明だが作家の遊び心と思いたい。

 石原さとみの変なキャラ設定とオーバー演技や、鷺巣詞郎の音楽がイマイチ、市民の視点が少ないなど不満点はある物の、怪獣映画と言う固定観念を打ち砕く、大災害と直面した政府の視点をメインで描いた大人の「ゴジラ」映画に仕立て上げた作家のセンスに共感した。

 樋口監督は「日本沈没」(06)で落胆させられたが、「のぼうの城」(12)で犬童一心監督とコラボして作品を成功させて、今回は庵野秀明とコラボして作品を成功させた。きっと彼は特技監督が本業で本編監督は未知数と思われる。本作はどこまで庵野監督で、どこからが樋口監督かは不明だが、私の中での樋口監督の悪いレッテルは挽回した。

 かなり斬新なゴジラ映画であるが、冒頭の古い東宝のロゴに続き、ブルー背景の東宝作品と言う白抜き文字、鎌倉のシーンでかかる伊福部昭の書いた「ゴジラ」のテーマ曲や、エンドロールで流れる怪獣映画音楽メドレーなど、先人へのオマージュも心憎い。子供や、怪獣対決を求めるファンには不評かもしれないが、私は素直に拍手を送りたい作品とめぐり合えて満足した、面白かった!

ラゾーナ川崎で撮影した「シン・ゴジラ 1/60サイズディスプレイ」
 

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