「ソロモンの偽証 前篇・事件」@松竹試写室

 映画レビューサイトCOCOさんのレビュアーを招いた試写会に参加した。客入りは8~9割位だ。

   

   映画の話
 クリスマスの朝、雪に覆われた中学校の校庭で柏木卓也という14歳の生徒が転落死してしまう。彼の死によって校内にただならぬ緊張感が漂う中、転落死の現場を目にしたという者からの告発状が放たれたことによってマスコミの報道もヒートアップ。さらに、何者かの手による殺人計画の存在がささやかれ、実際に犠牲者が続出してしまう。事件を食い止めようともせず、生徒たちをも守ろうとしない教師たちを見限り、一人の女子生徒が立ち上がる。彼女は学校内裁判を開廷し、真実を暴き出そうとするが……。

   映画の感想
 松竹さんの120周年記念のタイトルとロゴマークで幕開ける「ソロモンの偽証」。学校を舞台にした男子生徒の転落死をめぐるミステリーは、例えが変だが超ヘビー級の「金八先生」を見た気分だ。しかし、本作では担任が主役ではなく生徒たちが主役だ。

   以下ネタバレ注意

 物語は教師となった主人公の現在で始まり、時代はさかのぼり生徒転落事件が起こった1990年12月25日の朝から物語が動き出す。学校通用口の敷地内で雪に埋もれた男子生徒・柏木の死体が発見される。生徒は屋上からの転落死で警察の調査により自殺と断定されるが、事件に対する告発文が学校と担任と女子生徒宅に届けられたことで、生徒転落死は一転、事件となり学校内外で大問題となり、マスコミまで動き出した事で、学校内の事件は思いもよらぬ方向に動き出す。

 衝撃的な展開と描写に加え、心にグサグサと突き刺さるセリフに疲労困憊する位の力作である。「孤高のメス」(10)、「八日目の蝉」(11)と言ったミステリードラマで抜群の手腕を発揮した成島出監督であるが、吉永小百合主演「ふしぎな岬の物語」(14)で大失速してしまい、私の中で成島監督への信頼が揺らいでいる所に出会った本作で、再び成島監督らしい切れ込みの鋭い演出と、観客の心を揺さぶる演出がビシビシと決まり過ぎる手腕にノックアウトされた。正に本作は「ふしぎな岬の物語」の汚名返上と言える作品である。

 キャストの使い方も実に美味い。主役となる生徒たちに加え、主人公の現在を演じる尾野真千子はまだ判らないが、事件の重責に押しつぶれる校長の小日向文也に対して、豪快で頼りになる松重豊。この二人は「アウトレイジ ビヨンド」の先輩後輩の刑事コンビである。かなり緊張感を強いられるドラマであるが、松重が登場すると心がほっと一息つける癒し系キャラになっている所が良い。それとは正反対に生徒に対して高圧的な安藤玉恵木下ほうかの極悪コンビもドラマに一躍買う。そして事件で心が折れてノイローゼ状態の黒木華。彼女の部屋のお隣さんの市川実和子に至っては「リング」の貞子か「呪怨」の伽耶子並のインパクトのある演技を披露する。彼女の顔はホラー映画向きである。

 そんな中、松子の父役の塚地武雄がいい。コミカルな役が多い塚地が愛層の良い米屋店主から一転、怒りと悲しみが入り乱れ感情を爆発する演技が秀逸であった。そして、成島監督の「八日目の蝉」に引き続き出演となる永作博美は、物語の重要なカギを握る生徒の母役で音楽ライターと言う一癖ある役で、後篇で活躍しそうな予感である。他にも粘着系のTVディレクターの田中壮太郎、刑事の田畑智子ら適材適所に良いキャスティングがされている。

 物語は事故が事件へと変わり重苦しい展開が続く前半~中盤を経て、後半は生徒たちだけで裁判を開く前向きな展開に変貌し、一騒動置きそうな新たな展開を予感させて幕を引く。告発文の原点となる三宅と松子に暴力を加える大出一派のシーンを、視点を変えながら、見て見ぬふりする主人公をたしなめる柏木のセリフは、観客にも自問自答させる演出が上手い。物語の鍵は柏木の友人・神原の存在である。他校の生徒でありながら事件の裁判に熱心に取り組む彼に対して、教師の北尾が問う「何でそんなに一生懸命がんばるんだ?」。このセリフこそが後篇の鍵となる様に思う。

 この後の展開は私の予想であるが、事件の答えは松本清張原作「疑惑」と同じオチになるのではと予想する。と言うか、本作はもしかして宮部みゆき版「疑惑」なのではないだろうか?まだ、前篇しか見ていないので、作品への評価を書くのは難しいが、前篇だけでこれだけのクオリティだったので、4月公開の「後篇・裁判」も大きく期待出来るだろう。エンドロール後に「後篇・裁判」の予告編が上映されるので慌てず帰らぬ事。とにかく後篇も楽しみである。

   

   

   
   
   

 

"「ソロモンの偽証 前篇・事件」@松竹試写室" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント