「旅猫リポート」@丸の内ピカデリー1

公開3週目に入った平日昼間。私が座った2階席には私を含めて4名、一階席も10数人くらいと思われる。

   

   映画の話
 野良猫だったナナは交通事故に遭ってしまい、猫好きの人のいい青年・悟(福士蒼汰)に救われる。その後5年間、ナナは家猫として悟と仲良く暮らしてきたが、ある事情から彼は愛猫を手放す決意を固める。そして新たな飼い主を見つけるため、彼らは悟の親友や初恋の相手などを訪ねる旅に出る。

   映画の感想
 実は私、本作は試写で拝見していて、縁あって2度目の鑑賞となる。1度目はタイトルから苦手なジャンルとなめ切って油断して見たら、最後は感動で泣いてしまった作品だ。

 映画というものは、こういう作品との出会いがあるからやめられないのだ。

 本作は主人公の視点に加えて、擬人化した猫の視点で物語が語られ、現在と過去が交差する2層構造となった作品だ。

 物語の幕開けは、悟とナナの出会いに始まり、何かの理由で悟がナナを手放すことになり、そのナナの新しい飼い主探しが、悟が運転する車で移動するロードムービー形式で描かれる。

 しかし、なぜ悟がナナを手放さなければいけない事は語られない。ここが重要である。物語は起承転結で言う「」がぼやかされているのだ。

 車で旅する悟とナナ。その旅は悟の人生を振り返るように、小学生時代に悟が初めて飼った猫『ハチ」のエピソードとともに、悟に訪れる悲劇が描かれる。

 悟の旅は小学生時代の同級生・幸介から、高校の同級生で親友でペンションを営む杉夫妻との、過去の淡い三角関係が描かれる。

   以下ネタバレ注意

 ここでまた悟の抱えた重大な事が小出しに見えてくる。何か薬を飲む悟の姿とともに、杉家の犬・虎丸がナナに向かい「終わりの匂いがする」と言っていた。

 そう、この悟とナナの旅は、ナナの新たな飼い主探しが表向きの課題であるが、実は病気を抱えた悟の人生を締めくくるため、友人たちにお別れをするための旅だという事がわかってくる。

 後半の詳細は伏せるが、人と人の繋がりや絆をこんな形で描いた作品はほかに見たことがない。とても重いテーマをこんなに優しく楽しい描写を積み重ねて描くなんて反則だ。

 ずぅーっと気丈に振る舞っていた法子(竹内結子)がこらえていた感情が決壊する瞬間に、私の涙もあふれ出た。ちょうどこのシーンは悟の両親の葬式で、悟が大泣きするシーンと対になっている。

 それにしても悟役の福士蒼汰がいい役者になった。彼が主演した「曇天に笑うも拝見したが、こちらは大げさな演技が好きではなかったが、本作の福士蒼汰は憂いと陰りのある演技で悟を演じきった。そして、ナナの声だけの出演となった高畑充希のツンデレっぽいしゃべり方も上手く物語を盛り上げた。

 それから「この世界の片隅にの音楽で知られるコトリンゴのスコアが良い。騒がしいスコアが多い邦画の中で、これだけほんわかした大貫妙子みたいなボーカルをフィーチャーしたスコアが心地よすぎる。

 監督はフジテレビのホラードラマ「トリハダシリーズの三木庫一郎という事が個人的に一番の衝撃であった。

 「旅猫リポート」は、公開から3週目に入り、シネコンではだいぶ上映が縮小されてしまったが、今年見るべき一本であることは確かだ。多くの映画ファンに見てもらいたい作品だ。 

   

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