「奥田民生になりたいボーイと出会う男をすべて狂わせるガール」@一ツ橋ホール

 試写会の客入りは8割位。女性客が多い。
   


   映画の話
 「愛のために」「イージュー★ライダー」「さすらい」など数多くのヒット曲を世に送りだしてきた奥田民生を敬愛する35歳の編集者コーロキ・ユウジ(妻夫木聡)は、ライフスタイル雑誌の編集部に異動することに。不慣れな環境に苦労しながらも日々奮闘していたある日、仕事で出会った天海あかり(水原希子)を好きになる。それ以来彼女にふさわしい男になろうと仕事に打ち込み、デートの時も一生懸命頑張っていたが、何をやっても空回りしてしまい……。

   映画の感想
 何とも長いタイトルだ。「民生ボーイと狂わせガール」で十分通じると思う。有人カウンターで観客がチケットを買い辛いタイトルだ。本作は「奥田民生」というアーティストを崇拝する編集者の主人公が、女とスマホとライターに振り回される恋愛コメディだ。なかなか面白い題材だが、あまりにもピンポイント過ぎる題材である事は否めない。「主人公が崇拝する奥田民生にどの位の観客が共感するのか?」が疑問だ。

   以下ネタバレ注意

 主役コーロキを演じる妻夫木聡はたぶん実年齢より若い役を、泣いたり吠えたり笑ったりと捨て身の変幻自在な演技で相変わらずうまい。それにしても、今のスマホ所有者はLINEを見て、あんなに泣いたり吠えたり怒ったりとするのだろうか?あれではスマホの奴隷である。スマホもLINEもやらない者からしてみると異様な光景である。

 そんな中、コーロキを狂わせる「あかり」役の水原希子の存在感が薄い。彼女は見てくれ重視で内面が見えてこない。もう少し、あかりの私生活を掘り下げて人間性を見せてほしかった。この役は意外と難しい役で、もっと内面の演技ができる女優を起用して欲しかった。周りのキャストが上手い役者がそろっていただけに、彼女だけが浮いて見えた。

 出版&ファッション業界が舞台で、随所に業界ネタや音楽ネタ投入されていたが、空回り気味な事も惜しい。まず「あかり」が務めるファッション会社「GOFFIN&KING」の名前は、アメリカのソングライター

ジェリー・ゴフィンキャロル・キング夫妻の名前からとったものだろう。そして、本作で唯一あかりが人間的な仕草が見えるのが「女子会」で披露するジェームズ・ブラウンのモノマネだ。かなりうまいモノマネだが、ネタが古すぎるのか観客の反応が著しく悪かった。それからオチで重要な役割をするセルジュ・ゲンスプールもマニアック過ぎて、一般の方には判り辛い事が難点だ。

 ドラマはコーロキの「3年後」で締めくくられるが、ださかった「民生ボーイ」がいきなりお洒落に脱皮してしまい驚かされる。そんなコーロキが立ち食いソバ屋で若き日の自分と対峙するシーンがあるが、このシーンが絶品だ。仕事と恋愛にがむしゃらに生きてきた昔の自分の姿を見て思わず涙ぐむ。丁度、妻夫木が主演した「マイ・バック・ぺージ

のラストと対を成す良い描写だ。

 そんなコーロキがもがいて生きた編集者人生を、東京湾を必至に泳ぐコーロキの姿で表現したエンドロールは、まるで内田裕也主演映画「コミック雑誌なんかいらないのオマージュなのか?パロディなのか?謎多き幕引きに混乱した。まぁ、本作は以外と観客を選ぶ作品で、監督&キャストのファンや奥田民生ファンはまた別な意見になりそうな作品である。

   



   

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