「怒り」@東宝試写室
Yahoo!映画ユーザーレビュアー試写会。客席は満席。

映画の話
八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。
映画の感想
「怒り」は、1年前に発生した殺人事件で指名手配犯となった犯人と、よく似た訳ありの3人の男をめぐり翻弄される人々を描いたサスペンス群像劇だ。
以下ネタバレ注意
物語は2007年に発生した「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件」の犯人・市橋達也の逃亡生活にインスパイアされた物で、本作の訳ありの3人の男は皆、市橋達也が逃亡中に噂になった事案を、3人に振り分けて、肉付けして膨らませてキャラクターを作ったように思う。
まず、警察が公開指名手配犯の写真として公開した犯人の写真が市橋達也にソックリであり、逃亡中に整形手術を受けた写真も市橋にソックリである。
当時、逃亡中の市橋がゲイバーで働き潜んでいる。名前と顔を変え変装して職場を転々としているなど、マスコミは様々な憶測が飛び交った。結果的に市橋は整形をして無人島で身を潜めていたのだ。
本作は更に怒りの矛先を沖縄米軍基地問題に踏み込む。今も米軍が我が物顔で駐屯する沖縄で頻発する米軍の不祥事。本作はそんな沖縄で最も忌まわしい事件を真正面から描く。詳細は省くが、ショッキングな描写は女性観客には多大なストレスを与える可能性もある。今も眼の前で起こっている事件を作品に取り入れた監督の意欲を評価したい。
同時並行で描かれる訳ありの3人の男たちと、彼らに接した人たちの信頼と疑心暗鬼に揺らぐ心を、監督は徹底的に掘り下げる。ヒリヒリとした痛みを感じる程の描写の数々を積み重ね導き出す答え。それは偶然ではなく必然だったように思う。
実在の凶悪事件をモチーフに、沖縄米軍基地問題を絡めた物語に作家の意欲を感じた。監督は訳ありの3人をミステリアスに描きながら、男たちに振り回されて信じる気持ちと疑いの気持がせめぎ合う人々の姿を、徹底的に掘り下げて描いた。
犯人捜しと言う観点で見ると様々なトラップを仕掛けて観客を惑わす演出が上手い。同じように濃密に描いた衝撃的なドラマは今年一番であり、難しい役を演じきったキャストの好演も特筆する見応え満点な作品だ。
おまけ
本作がモチーフとした市橋達也の逃亡生活を、ディーン・フジオカ監督、主演で映画化した;「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」も必見である。


映画の話
八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。
映画の感想
「怒り」は、1年前に発生した殺人事件で指名手配犯となった犯人と、よく似た訳ありの3人の男をめぐり翻弄される人々を描いたサスペンス群像劇だ。
以下ネタバレ注意
物語は2007年に発生した「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件」の犯人・市橋達也の逃亡生活にインスパイアされた物で、本作の訳ありの3人の男は皆、市橋達也が逃亡中に噂になった事案を、3人に振り分けて、肉付けして膨らませてキャラクターを作ったように思う。
まず、警察が公開指名手配犯の写真として公開した犯人の写真が市橋達也にソックリであり、逃亡中に整形手術を受けた写真も市橋にソックリである。
当時、逃亡中の市橋がゲイバーで働き潜んでいる。名前と顔を変え変装して職場を転々としているなど、マスコミは様々な憶測が飛び交った。結果的に市橋は整形をして無人島で身を潜めていたのだ。
本作は更に怒りの矛先を沖縄米軍基地問題に踏み込む。今も米軍が我が物顔で駐屯する沖縄で頻発する米軍の不祥事。本作はそんな沖縄で最も忌まわしい事件を真正面から描く。詳細は省くが、ショッキングな描写は女性観客には多大なストレスを与える可能性もある。今も眼の前で起こっている事件を作品に取り入れた監督の意欲を評価したい。
同時並行で描かれる訳ありの3人の男たちと、彼らに接した人たちの信頼と疑心暗鬼に揺らぐ心を、監督は徹底的に掘り下げる。ヒリヒリとした痛みを感じる程の描写の数々を積み重ね導き出す答え。それは偶然ではなく必然だったように思う。
実在の凶悪事件をモチーフに、沖縄米軍基地問題を絡めた物語に作家の意欲を感じた。監督は訳ありの3人をミステリアスに描きながら、男たちに振り回されて信じる気持ちと疑いの気持がせめぎ合う人々の姿を、徹底的に掘り下げて描いた。
犯人捜しと言う観点で見ると様々なトラップを仕掛けて観客を惑わす演出が上手い。同じように濃密に描いた衝撃的なドラマは今年一番であり、難しい役を演じきったキャストの好演も特筆する見応え満点な作品だ。
おまけ
本作がモチーフとした市橋達也の逃亡生活を、ディーン・フジオカ監督、主演で映画化した;「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」も必見である。
この記事へのコメント