「世界から猫が消えたなら」@109シネマズ二子玉川
私は「109シネマズ二子玉川」開館一周年記念試写会に招かれた。客入りは最前列以外満席だ、映画上映後には原作者・川村元気さんを招き、伊藤さとりさん司会でトークショーと観客とのQ&Aが行われた。

映画の話
ある日、余命いくばくもないごく平凡な30歳の郵便配達員(佐藤健)の前に、自分と同じ容姿を持つ悪魔(佐藤健)が出現する。その悪魔は、彼の身の回りの大切なものと引き換えに一日の命をくれるというのだ。次々と電話や映画や時計などが消えていく中、彼は初恋の女性(宮崎あおい)と再会し、共に過ごした日々を振り返る。
映画の感想
題名から勝手に「猫」映画と思ったら違った。物を通して人と人の繋がりを描いた考えさせられる深いドラマだ。「猫」映画とハードルを下げて見た事が良かったのか、甘い所もあり、やや難はあるが良い作品である。題名で損している所が惜しい
脳腫瘍が見つかり余命宣告された主人公が、自分と同じ姿をした悪魔から「身の回りの大切なものと引き換えに一日の命をくれる」と囁かれ取引をしてしまう。電話、映画、時計、猫、と彼の大事な物が消えていくことで、改めて消えた物の存在と、その物を通して繋がっていた人達との関係の大事さに気付いていくドラマだ。
以下ネタバレ注意
そのドラマの表現方法も面白く、時系列は現在と過去が交差し、物が無くなる事で過去の出来事が回想で挿入される、ちょっと難易度の高い構成だ。そして、アグレッシブな映像表現も上手い。佐藤健が二役演じる主人公と悪魔に始まり、電話、映画が消えていく過程を大胆なCGを駆使した斬新な映像で魅せる。
その中でも物を通した人との繋がりが本作の最大のテーマだ。映画を通して親友となったツタヤ(本当はタツヤ)を筆答に、彼の勧めで自宅のビデオで見た「メトロポリス」
と、その時に間違え電話で繋がる彼女の存在を台詞ではなく映像として明確に描いた事が良い。
主人公の趣味となる映画の師匠となるツタヤは、多分、原作者の分身であり、ナイーブな主人公も原作者の分身の様に感じる。ツタヤは丁度、ビデオ屋アルバイト時代のクエンティン・タランティーノみたいな男であり、映画オタク的な男を演じる濱田岳が上手い。二人のやり取りは映画ファンがニヤリとするエピソードも多々あり楽しい。
そして主人公の恋人は映画館に住み込みで働く女子だ。上映している映画は「ファイトクラブ」と「花とアリス」だ。各作品の事はネタバレになるので詳しく書かないが、共に原作者が影響を受けた作品なのだろう。それにしても無茶苦茶な二本立てだ。
舞台も小樽だけではなく、映画「ブエノスアイレス」に導かれて旅するアルゼンチン、圧巻な「イグアスの滝」のロケーションが素晴らしいブラジルと、舞台も世界を股にかけて物語にアクセントを与えた。
物語の最後は「猫」のエピソードだ。家族を繋ぐ潤滑油の様な存在の猫。病気の母と寡黙な時計屋の父。最終章は主人公のメンタルな部分や、家族への愛、死生観がつづられる。先にも書いたが甘さの残る所や、曖昧な幕引きなど難はあるが、改めて物と人の繋がりを考えさせられる良い作品だ。

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映画の話
ある日、余命いくばくもないごく平凡な30歳の郵便配達員(佐藤健)の前に、自分と同じ容姿を持つ悪魔(佐藤健)が出現する。その悪魔は、彼の身の回りの大切なものと引き換えに一日の命をくれるというのだ。次々と電話や映画や時計などが消えていく中、彼は初恋の女性(宮崎あおい)と再会し、共に過ごした日々を振り返る。
映画の感想
題名から勝手に「猫」映画と思ったら違った。物を通して人と人の繋がりを描いた考えさせられる深いドラマだ。「猫」映画とハードルを下げて見た事が良かったのか、甘い所もあり、やや難はあるが良い作品である。題名で損している所が惜しい
脳腫瘍が見つかり余命宣告された主人公が、自分と同じ姿をした悪魔から「身の回りの大切なものと引き換えに一日の命をくれる」と囁かれ取引をしてしまう。電話、映画、時計、猫、と彼の大事な物が消えていくことで、改めて消えた物の存在と、その物を通して繋がっていた人達との関係の大事さに気付いていくドラマだ。
以下ネタバレ注意
そのドラマの表現方法も面白く、時系列は現在と過去が交差し、物が無くなる事で過去の出来事が回想で挿入される、ちょっと難易度の高い構成だ。そして、アグレッシブな映像表現も上手い。佐藤健が二役演じる主人公と悪魔に始まり、電話、映画が消えていく過程を大胆なCGを駆使した斬新な映像で魅せる。
その中でも物を通した人との繋がりが本作の最大のテーマだ。映画を通して親友となったツタヤ(本当はタツヤ)を筆答に、彼の勧めで自宅のビデオで見た「メトロポリス」
主人公の趣味となる映画の師匠となるツタヤは、多分、原作者の分身であり、ナイーブな主人公も原作者の分身の様に感じる。ツタヤは丁度、ビデオ屋アルバイト時代のクエンティン・タランティーノみたいな男であり、映画オタク的な男を演じる濱田岳が上手い。二人のやり取りは映画ファンがニヤリとするエピソードも多々あり楽しい。
そして主人公の恋人は映画館に住み込みで働く女子だ。上映している映画は「ファイトクラブ」と「花とアリス」だ。各作品の事はネタバレになるので詳しく書かないが、共に原作者が影響を受けた作品なのだろう。それにしても無茶苦茶な二本立てだ。
舞台も小樽だけではなく、映画「ブエノスアイレス」に導かれて旅するアルゼンチン、圧巻な「イグアスの滝」のロケーションが素晴らしいブラジルと、舞台も世界を股にかけて物語にアクセントを与えた。
物語の最後は「猫」のエピソードだ。家族を繋ぐ潤滑油の様な存在の猫。病気の母と寡黙な時計屋の父。最終章は主人公のメンタルな部分や、家族への愛、死生観がつづられる。先にも書いたが甘さの残る所や、曖昧な幕引きなど難はあるが、改めて物と人の繋がりを考えさせられる良い作品だ。
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