「レヴェナント 蘇えりし者」@チネチッタ

 入場料金\1100のチネチッタデーと重なった公開2日目、夕方。この映画館で一番大きいチネ8には6割位の客入りだ。上映にはクラブチッタが監修した独自の音響「LIVEサウンド」が導入された。

   

   映画の話
 アメリカ西部の原野、ハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は狩猟の最中に熊の襲撃を受けて瀕死(ひんし)の重傷を負うが、同行していた仲間のジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)に置き去りにされてしまう。かろうじて死のふちから生還したグラスは、自分を見捨てたフィッツジェラルドにリベンジを果たすべく、大自然の猛威に立ち向かいながらおよそ300キロに及ぶ過酷な道のりを突き進んでいく。

   映画の感想
 説明的描写を排除し、役者の演技と映像だけで物語を流麗に描いた傑作だ。本作がアカデミー賞で作品賞を逃した事を疑問と感じるが、これは選考委員が前年、同じイニャリトゥ監督「バードマンが作品賞を受賞した事が関係し、同じ監督作品が2年連続作品賞を受賞する事を避けて「スポットライト」に票が流れたと推測する。

 物語は至ってシンプルな復讐劇であるが、そこまで行く過程が尋常ではない過酷な道のりだ。大自然の猛威が次々と主人公ダラスに襲いかかる。ハンターたちが先住民の襲撃に遭うオープニングから、命からがら逃げた先でのグリズリーの襲撃と、驚愕の撮影とVFXに圧倒される。

 特にダラスがグリズリーに襲われるシーンは、既存の作品で見る事の出来ない、人間が自分の体より数倍大きい猛獣に襲われて、成す術を無くし振り回される姿を明確に描く。私が昔見た「グリズリー」(76)とは雲泥の差の映像には恐怖を感じた。エンドロールでVFXにILMが参加していた事が判ったので、ILMが驚愕の映像を作り出したのだろう。

 熊の襲撃に遭い瀕死の重傷を負ったダラス。体を動かす事の出来ない彼の行末は死をみとるまで、隊と別働のフィッツジェラルドとブリッジャー、彼の息子ホークに託される。完全に金目当てのフィッツジェラルドの悪だくみでホークはダラスの眼の前で殺され、ブリッジャーもフィッツジェラルドの口車にのせられてダラスを見捨ててしまう。

 ここから先ディカプリオは言葉もままならない悶絶するだけの大変な一人演技が続く。一命をとりとめて蘇ったダラスは足を骨折し、体中傷だらけの状態でほふく前進のような形で這いつくばりながら、息子の仇討とばかりにフィッツジェラルドの後を追う過酷なサバイバル劇が始まる。もう、ここから先は復讐への執念に憑りつかれた男の狂気な姿に、映画を見ているこちらにも力が入ってしまう。

 そんな中、防寒の為に死んだ馬の体を割いて猛吹雪から難を逃れるシーンは、「スター・ウォーズ帝国の逆襲」の冒頭で重症を負ったルークを、ハン・ソロが死んだトーントーンの体を割いて中に入れて、猛吹雪から体温の低下を防いだシーンを思い出した。

 縦横無尽に主人公を捉えるカメラアングルにも圧巻だ。主人公を横から捉えたショットが、いつの間にか馬に乗る主人公と並走するシーンをワンカットで捉えたり、随所に長回しを多用した撮影に唸らされる。ダラスの大陸横断の孤独な旅には「バードマン」に引き続き、隕石の落下や幻想的な妄想シーンなどイニャリトゥ監督らしい描写が随所に投入し、観客のイマジネーションを刺激する。

 前作「バードマン」で監督として到達点に達したかと思ったイニャリトゥ監督。しかし、監督はアメリカ開拓時代を舞台にした復讐劇と言う、未知なるジャンルでも自分の個性をいかんなく発揮した。余韻を残した幕引きまで計算された演出まで文句の付けようの無い作品である。

   LIVEサウンドについて
   
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 スクリーンの真下に4本増設されたJBLスピーカー。多分、低音を受け持つスーパーウーハーと思われる。ブーミー気味にブンブン唸り上がる低音が、繊細な映画音響と相性が悪く、本作では邪魔な低音増強だった。今までアニメ作品で好評のようだったが、オーディオ的な考えで言うとこの低音はNGである。チネチッタは好きな映画館だけに、独自の路線で観客を開拓する事に賞賛を送るが、今回の「レヴェナント」との相性は最悪であった。作品のチョイスにはもう少し慎重に行って欲しい。

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