「キングスマン」@よみうりホール
試写会の客入りは若干空席がある95%位だ。


映画の話
ロンドンにある高級スーツ店「キングスマン」は、実はいかなる国の干渉も受けない屈指のエリートスパイ集団だった。ブリティッシュスーツを小粋に着こなす紳士ハリー(コリン・ファース)もその一人で、日々極秘任務の遂行に務めていた。そんなある日、仲間が何者かに暗殺され、彼は街で不良少年エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。
映画の感想
本作は現代が舞台設定となっているが、ちょっと懐かしいテイストを感じる。そのルーツはショーン・コネリー版「007」のヒットにより、60年代に製作された亜流スパイ映画の匂いに近い。そんな60年代風スパイ映画に主人公の成長物語とキレキレのアクションをミックスさせて生まれた作品が「キングスマン」だ。
以下ネタバレ注意
「アーサー王と円卓の騎士」の騎士と同じスパイネームを使う諜報員の活躍を描いた作品は、所々にオマージュやリスペクトが見受けられる。冒頭、人質になった博士は「スター・ウォーズEP4~6」で主人公ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルだ。その後、博士は事件の黒幕ヴァレンタインと対面する。その黒幕は「スター・ウォーズ EP1~3」でメイス・ウィドゥを演じたサミュエル・L・ジャクソンだ。「スター・ウォーズ」で共演する事の無い二人が、こんな形で共演するとは「スター・ウォーズ」ファンを驚かさせる幕開けだ。
物語は冒頭の人質奪還作戦で失敗し殉職した諜報員の穴を埋める為に、各諜報員が一人ずつ新たなスパイをスカウトして、その中から一人だけを「キングスマン」のメンバーにする。ハリーがスカウトするのは、15年前の任務で殉職した仲間の息子エグジーだ。父亡き後、労働者階級の粗暴な義父に虐げられて育った不良少年エグジーをスカウトしたハリーは、彼にスパイにふさわしい立ち振る舞いから身のこなしまでプロデュースする。いわば、セリフにも出てくるがスパイ版「マイ・フェア・レディ」を実行に移す。同じころ、人類抹殺計画を目論むIT長者ヴァレンタインの計画を阻止する為に、「キングスマン」は着々と諜報活動を続けていた。
マシュー・ヴォーンが描くスパイ映画は、イギリス出身の監督らしく、主人公は労働者階級に育ち、マナーを知らぬ不良の道を歩いている。同じイギリス出身のケン・ローチ監督が好んで描く題材を、ヴォーン監督はハイテンションなエンタメスパイアクションに仕立て上げた。バーにたむろする不良たちの構図を労働者階級の人々の象徴のように描いた点が面白い。ここでの不良とハリーの対決シーンは前半のハイライトと言える。
物語中盤はスパイにスカウトされた若者たちの群像劇となり、様々な難関を突破したエリートのみが生き残るソーサバイバルがテンポ良く描かれる。そんな中、ヴァレンタインが自分が作った怪電波発生装置を使い、教会に集まった人々めがけてテストする。教会に潜入中のハリーも現場に巻き込まれて、狂った人々を相手に大量虐殺を繰り広げる。そして想定外の展開に驚かされる。
後半はヴァレンタインの計画を阻止する為に生き残った「キングスマン」メンバーは、要塞へ潜入と、衛星爆死計画を実行に移す。ここからの展開は正に「007」である。要塞潜入班と宇宙へ衛星爆破に向かう班と二手に分かれて、キングスマンは諜報活動を繰り広げる。
音楽は多くの「007」シリーズを手掛けたジョン・バリー調のスコアをリスペクトした切れ味の良いスコアに始まり、ヴァレンタインの要塞内部のスタジオ撮影が見え見えなチープなセットは、初期「007」シリーズのプロダクションデザインを担当したケン・アダムのセットデザインを再現したと思われる。それにしても、酒はマティーニとか「007」ファンはニヤリとしてしまう仕掛けが楽しい。
スパイ映画ならでは怒濤のクライマックスに、チープなCG演出が加わりブラックな幕引きまで、こちらの想定を超えた展開の連続で幕を引くが、エンドロール中に更なるクライマックスが待っている。あのシーンを忠実再現して主人公の成長の証しとした、このおまけ映像は正にウルトラCと言える見事な着地だ。客席からもどっと拍手が沸き起こる、近年の作品では最高の幕引きであろう。たぶん続編も作られる事だろう。早くも楽しみである。


映画の話
ロンドンにある高級スーツ店「キングスマン」は、実はいかなる国の干渉も受けない屈指のエリートスパイ集団だった。ブリティッシュスーツを小粋に着こなす紳士ハリー(コリン・ファース)もその一人で、日々極秘任務の遂行に務めていた。そんなある日、仲間が何者かに暗殺され、彼は街で不良少年エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。
映画の感想
本作は現代が舞台設定となっているが、ちょっと懐かしいテイストを感じる。そのルーツはショーン・コネリー版「007」のヒットにより、60年代に製作された亜流スパイ映画の匂いに近い。そんな60年代風スパイ映画に主人公の成長物語とキレキレのアクションをミックスさせて生まれた作品が「キングスマン」だ。
以下ネタバレ注意
「アーサー王と円卓の騎士」の騎士と同じスパイネームを使う諜報員の活躍を描いた作品は、所々にオマージュやリスペクトが見受けられる。冒頭、人質になった博士は「スター・ウォーズEP4~6」で主人公ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルだ。その後、博士は事件の黒幕ヴァレンタインと対面する。その黒幕は「スター・ウォーズ EP1~3」でメイス・ウィドゥを演じたサミュエル・L・ジャクソンだ。「スター・ウォーズ」で共演する事の無い二人が、こんな形で共演するとは「スター・ウォーズ」ファンを驚かさせる幕開けだ。
物語は冒頭の人質奪還作戦で失敗し殉職した諜報員の穴を埋める為に、各諜報員が一人ずつ新たなスパイをスカウトして、その中から一人だけを「キングスマン」のメンバーにする。ハリーがスカウトするのは、15年前の任務で殉職した仲間の息子エグジーだ。父亡き後、労働者階級の粗暴な義父に虐げられて育った不良少年エグジーをスカウトしたハリーは、彼にスパイにふさわしい立ち振る舞いから身のこなしまでプロデュースする。いわば、セリフにも出てくるがスパイ版「マイ・フェア・レディ」を実行に移す。同じころ、人類抹殺計画を目論むIT長者ヴァレンタインの計画を阻止する為に、「キングスマン」は着々と諜報活動を続けていた。
マシュー・ヴォーンが描くスパイ映画は、イギリス出身の監督らしく、主人公は労働者階級に育ち、マナーを知らぬ不良の道を歩いている。同じイギリス出身のケン・ローチ監督が好んで描く題材を、ヴォーン監督はハイテンションなエンタメスパイアクションに仕立て上げた。バーにたむろする不良たちの構図を労働者階級の人々の象徴のように描いた点が面白い。ここでの不良とハリーの対決シーンは前半のハイライトと言える。
物語中盤はスパイにスカウトされた若者たちの群像劇となり、様々な難関を突破したエリートのみが生き残るソーサバイバルがテンポ良く描かれる。そんな中、ヴァレンタインが自分が作った怪電波発生装置を使い、教会に集まった人々めがけてテストする。教会に潜入中のハリーも現場に巻き込まれて、狂った人々を相手に大量虐殺を繰り広げる。そして想定外の展開に驚かされる。
後半はヴァレンタインの計画を阻止する為に生き残った「キングスマン」メンバーは、要塞へ潜入と、衛星爆死計画を実行に移す。ここからの展開は正に「007」である。要塞潜入班と宇宙へ衛星爆破に向かう班と二手に分かれて、キングスマンは諜報活動を繰り広げる。
音楽は多くの「007」シリーズを手掛けたジョン・バリー調のスコアをリスペクトした切れ味の良いスコアに始まり、ヴァレンタインの要塞内部のスタジオ撮影が見え見えなチープなセットは、初期「007」シリーズのプロダクションデザインを担当したケン・アダムのセットデザインを再現したと思われる。それにしても、酒はマティーニとか「007」ファンはニヤリとしてしまう仕掛けが楽しい。
スパイ映画ならでは怒濤のクライマックスに、チープなCG演出が加わりブラックな幕引きまで、こちらの想定を超えた展開の連続で幕を引くが、エンドロール中に更なるクライマックスが待っている。あのシーンを忠実再現して主人公の成長の証しとした、このおまけ映像は正にウルトラCと言える見事な着地だ。客席からもどっと拍手が沸き起こる、近年の作品では最高の幕引きであろう。たぶん続編も作られる事だろう。早くも楽しみである。
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