映画「蜩ノ記」@ニッショーホール

 土曜日昼間の試写会。客年齢層は幅広く、客入り9割位。

   
 
   映画の話
 7年前に前例のない事件を起こした戸田秋谷(役所広司)は、藩の歴史をまとめる家譜の編さんを命じられていた。3年後に決められた切腹までの監視役の命を受けた檀野庄三郎(岡田准一)は、秋谷一家と共に生活するうち、家譜作りに励む秋谷に胸を打たれる。秋谷の人格者ぶりを知り、事件の真相を探り始めた庄三郎は、やがて藩政を大きく揺るがしかねない秘密を知るが……。

   映画の感想
 「蜩ノ記」は感動時代劇として見ると合格なのかもしれないが、娯楽時代劇や現代劇を見慣れた観客には、淡々とした淡白気味な展開で退屈な作品となるだろう。

 映画のチラシを読むと「夫婦の愛」「家族の愛」「初めての恋」「師弟の愛」と4つのテーマを、2時間9分の作品に盛り込んでおり、どのテーマも掘り下げか浅く中途半端な印象しか残らなかった。

   以下ネタバレ注意

 物語の冒頭、城内で書き物中の庄三郎が吹き込んだ風により、隣で書き物中の水上(青木崇高)が着ている着物の家紋部分を墨で汚してしまう。逆上した水上は刀を抜き庄三郎に切りかかる。自己防衛の為に庄三郎は水上の足を切りつける刃傷沙汰を城内で起こしてしまう。家老の中根(串田和美)は庄三郎に罪を免ずる代わりに、ある事件で幽閉されている「戸田秋谷を監視せよ」と言う藩命だった。

 ここで観客は庄三郎と共に戸田秋谷が起こした事件を中根から聞かされる訳であるが、事件の概要をセリフで説明するのでよく判らない。何故、大事な物語の最重要出来事を映像として描かないかは、物語中盤辺りで判明するが、ここは小泉監督の師匠・黒澤明羅生門」(50)を見習い、第三者が語る事件の真相を映像化して、観客を混乱させる手法もあったと思う。まぁ、本作の狙いはそこでは無いので、この様な形となったと思うが、何か本作は観客に距離を置いているように感じる。

 物語は田舎の村で幽閉生活を送る戸田とその家族の元に、庄三郎が監視役として送り込まれて、彼らと接する内に変化していく庄三郎の心を描いていく。

 物語は庄三郎の視点を通して、武士の生き方、夫を支える妻の姿、つつましく生きる村人の姿を描きながら、武士と村人の格差や、戸田が起こした事件の真相が明らかになる。切腹に10年と言う猶予を与えられ、残り少ない人生を達観する戸田の生き様に感化されていく庄三郎と、親友を武士に見殺しにされた戸田の息子・育太郎(吉田晴登)が選択する驚きの行動と、避けられぬ戸田の運命がクライマックスに待ち受ける。

 時代劇なのに「SP」仕込みの格闘シーンと殺陣を披露する岡田准一、威厳を持った武士の姿を体現した役所広司が安定した演技を魅せる中、父親の背中を見て育った息子・育太郎の侍スピリッツや、やけに人間臭い老子・中根を演じた串田和美のひょうひょうとした演技が作品の隠し味となった。「わびさび」と言った日本古来の美意識を映像化した作品であるが、今の時代にはいささかズレている事は否めない。

 比べる事が野暮かもしれないがエンタメ時代劇「るろうに剣心」が大ヒットする中に、本作を受け入れる心を持った日本人はどの位いるのだろうか?時代劇として見るとかなり物足りない作品であるが、日本の美しい四季の移り変わりと共に、運命が定められた父親を支える家族のドラマとして見る事が、本作の正しい鑑賞スタイルなのかもしれない。

   

   

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この記事へのコメント

今井
2014年10月09日 17:30
原作は最高の作品でした。
原作と映画は似ていても異なもの、割り切ればとても良い映画でしたが読んでない方は内容が分かりづらいかもしれませんね。
2014年10月09日 18:36
今井様

コメントありがとうございます。
私は正に原作未読の為にとても判り辛く、感情移入し辛い作品でした。
機会があったら原作を読んでみます。

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