映画「かぐや姫の物語」@イイノホール

 今回、私は試写会で本作を2回見る事が出来た。 一回目、文芸春秋さん主催。日曜日の夜の試写会はお子さんから年配の方まで幅広い年齢層で女性客が多い。客入りは7~8割くらいだ。二回目、AOLさんに招待された。平日夜の試写会の客入りは7割弱位でかなり空席が目立つ。

   

   映画の話
 ある日、竹取の翁は竹やぶの中で美しい女の子を見つけ、天からの授かりものとして育てることを決める。女の子は竹の子のような速度で成長し、翁は竹やぶで見つけた金を基に都に屋敷を建設。女の子は“かぐや姫“として高貴な姫になるべく教育を受けるが……。

   映画の感想
 高畑勲監督の14年ぶりの新作は、意表をついて日本古来の物語「竹取物語」を独自の解釈でアニメーション化した作品だ。あまりにも有名な「竹取物語」のストーリーは誰でも知っているようで、その物語のディティールは知る者は少ないように思う。そんな「竹取物語」を知るには絶好の作品である。しかし作品を見てみると、表向きは「竹取物語」を描きながら、その裏では痛烈に現代社会や人間のエゴ、現在のスタジオジブリを批判しているようにも受け取れる。

 物語はおなじみの翁じいさまが竹藪の竹の中からかぐや姫を見つけるシーンから始まるが、姫は赤子の姿に変化して翁とその妻・媼に育てられる。ここで注目は筍のごとく急速成長する姫の姿だ。愛おしい赤子の姿から、あっという間に歩きだし、喋り始めて、村の子供たちと遊び、彼らと行動を共にしていく。村の子供のリーダー格が捨丸だ。太い線で描かれた捨丸のキャラクターデザインは、何処か高畑監督が昔所属していた、東映動画作品に登場しそうなキャラクターみたいな顔立ちである。捨丸たちと成長する姫。その一方、翁は竹藪で光り輝く金と衣を手に入れて、媼と姫を連れて都へ行くことを決意する・・・。

   以下ネタバレ注意

 まず、本作をスタジオジブリ作品として見ると異端な作品のように感じた。アニメーションの顔となる作画は、白い余白だらけの鳥獣戯画と呼ばれる、墨画で書かれた絵巻物風のアニメだ。難しい言葉で書いたが、年賀状の挿絵をみたいな水彩絵の具を使い、太いラインを基調とした手書き風のアニメだ。ジブリと言えば宮崎駿作品を見るように、精密に書かれた美しい色合いのアニメを思い浮かべるが本作は、その手法とは正反対のアプローチだ。

 さて、本作は先に書いた「竹取物語」を使い様々なものをメタファーとして描いている。そのメタファーは姫が都の屋敷に越してきてから顕著に表れる。村の子供たちに“たけのこ”と呼ばれていた姫は、村で野山を駆け回る野生児のような生活を送ってきた。その後、姫は都の屋敷ではお姫様の様な習い事を強制されて、眉毛も抜かれ、白塗りのお歯黒姿のお姫様に強制される。しかし、姫の中には村での生活が忘れられず、屋敷の端くれに、昔暮らした山小屋の様な作業場と、庭には村の風景をミニチュア化したジオラマを作り、心を癒していた。

 そんな暮らしをする美しい姫の噂を聞いた5人の貴公子は姫の屋敷に乗り込み、有もしない宝物を持っていると嘘をつき、姫のハートを射止めようと熱烈にプロポーズする。普通であればイチコロのプロポーズは姫に通用せず、逆に「その宝物を見せてほしい」と貴公子たちに注文を付ける。口から出まかせを現実化するために偽物を作り小細工をする貴公子たち。そんな中、嘘を現実化させるために事故で死んでしまう貴公子が現れてしまう。嘘の上塗りが招いた事故であるが、注文を出した姫にも自責の念が重くのしかかる。

 さらに噂を聞きつけた御門までが姫を自分のにしようと現れる。自分の地位と名誉だけで姫を手に入れられると勘違いした哀れな御門の姿は、現代の金持ち層にも通じる男の姿だ。御門のキャラクターデザインも注目だ。極端にあごが尖った面長な逆三角形の顔は、子供のころから硬いもの食べないで、あごが発達しなかった御門の食生活を具体化した姿に見えた。その一方、御門までが姫との結婚を考えている事を喜ぶ翁は初心を忘れてしまった。姫の為を思い、位の高い者との婚礼を望んでいた翁は、いつの間にか姫を利用して自分の地位と名誉を望んでいる男になってしまった。

 人間社会に嫌気を感じた姫は庭に作った村のジオラマを「すべて偽物だ!」と叫び破壊する。この姫のセリフに私の心が騒いだ。もしかして、高畑監督は現在のジブリに不満を持っているのではないか?純粋なアニメスタジオとしてスタートしたジブリは、宮崎作品の成功により、三鷹の森ジブリ美術館を建設し経営に乗り出す。さらに世界規模でジオラマ的な夢の国ディズニーランドを経営するディズニーとも提携した。そんなディズニーと密接の関係となり巨大企業となったジブリへの不満が、ジオラマ破壊シーンへと繋がったように深読みしてしまった。

 そして物語クライマックスは、月へコンタクトをとった姫が、8月15日の十五夜に月からの使者と共に、月へ帰るおなじみの展開となる。姫を月へ帰すわけにいかない人間はあらゆる手段を使い、阻止を試みるが月からの使者の前では眠らされて太刀打ちが出来ない。そんな状況下、子供たちのわらべ歌が一瞬の時間を作り出し、翁と媼と姫の別れのシーンとなるが、途中で使者から衣を被せられた姫は意識を奪われたまま月へ帰っていく。しかし、ラストカットで姫の瞳には涙が浮かんでいる。観客に考える余地を残した幕引きが上手い。

 一見、超豪華な「まんが日本昔ばなし」風のアニメであるが、その表現方法はスタジオジブリだから成しえたクオリティだ。高畑監督らしい精密な人物描写は健在だ。赤子の姫の愛らしい動きにはじまり、姫がウリボウに襲われそうになるシーンや、キジを捕まえるシーンなど動きのあるシーン、姫が夢の中で村に帰る荒々しい作画、貴公子が大海原で嵐に襲われ、嵐雲が竜に変わるアニメならでは表現がよい。籠の中の鳥状態だった姫が桜の木の下で歓喜する躍動的な描写、大人になった捨丸と姫が再会して空を飛ぶジブリ作品らしい飛躍した表現など文句の付けようがない。そして、最後にアニメに声として命を与えた朝倉あき宮本信子故・地井武男の好演も素晴らしかった。日本の古典を最新アニメ技術で描いた高畑監督渾身の作品である。

   

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この記事へのコメント

ナドレック
2013年11月23日 14:44
こんにちは。
凄い映画でしたね!
試写会と封切後で二回見て、二回とも圧倒されました。
面長な御門を見て、『太陽の王子 ホルスの大冒険』の悪魔グルンワルドを思い出しました:-)

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