映画「謝罪の王様」@よみうりホール

 客入りはほぼ満席。読売新聞さん主催の試写会だ。

   

   映画の話
 依頼者たちに代わって謝ることで、彼らが抱える多種多彩なトラブルを収束する東京謝罪センター所長、黒島譲(阿部サダヲ)。ヤクザの車と追突事故を起こし、法外な賠償金の支払いを迫られていた帰国子女・典子(井上真央)は、彼に助けられたのがきっかけでセンターのアシスタントとなる。二人は、セクハラで窮地に陥った下着メーカー社員の沼田(岡田将生)、あるエキストラの起用で外交問題を起こしてしまった映画プロデューサー・和田(荒川良々)など、さまざまな顧客に降り掛かる問題を謝罪で解決していく。

   映画の感想
 ここ数年でここまで笑えた作品は無い。“謝罪師”という架空の主人公を描きながら、社会風刺とパロディで押し通す6部構成のドラマに仕立て上げた。

  映画と言う物はつかみ大事だ。本作のつかみは素晴らしい。どこか伊丹十三監督「タンポポ」を思わせる幕開けとなる。

 まず映画が始まると謝罪センターのCMと、それを見る映画館の観客マナーの悪さをパロディにする。作家の勢いは納まらない。謝罪をテーマに様々なパターンを見せる。悪い例として、映画「クローズド・ノート」の舞台挨拶で沢尻エリカがやらかした「別に・・・」発言を再現し、更に監督の悪口までぶちかますパロディ映像を作り出した。ちょっと古い07年公開作品のパロディなのに、試写会場のよみうりホールは大爆笑だ。1000名以上収容の試写会場での、観客一斉の大爆笑は凄まじいパワーを感じる。観客の心を掴んだ作品はそのままの勢いで突っ走り続ける。

   以下ネタばれ注意
 CASE1~6に構成されたドラマの幕開けCASE1は、司法書士を目指す帰国子女の倉持典子(井上真央)だ。ヤクザの車を大破させる交通事故を起こした典子は、アメリカ育ちの為に謝り方を知らない。激怒させたやくざと示談する為に登場するのが、謝罪センター所長・黒島譲(阿部サダヲ)だ。ここで注目はヤクザの親分だ。北野武監督「アウトレイジ」シリーズで地味にいい仕事をしてきた中野英雄が本作ではヤクザの親分役だ。謝罪に来た黒崎のヨイショ攻撃で上手く話しを丸め込まれてしまう親分役を、中野英雄が短い出演ながら好演していて「アウトレイジ」ファンを喜ばせる。

 CASE2は、セクハラで訴えられた下着メーカー社員・沼田(岡田将生)だ。軽薄セクハラ男が同じプロジェクトの女性担当者(尾野真千子)にセクハラ行為を繰り返し訴えられる。謝罪失敗を繰り返す沼田に代わり、黒崎所長はあっと驚く方法を使い謝罪する。このシーンのローケションはJR大塚駅近くの空蝉橋(うつせみばし)で撮影された。

 こんな具合に庶民レベルで始まる謝罪ドラマは、どんどんハードルがあがり、CASE3では二世俳優が起こした傷害事件を謝罪する元夫婦の大物俳優(高橋克実、松雪泰子)を描く。子供が起こした事件を親がテレビで謝り、事件を起こした息子本人もテレビカメラに向かって謝る、日本芸能界の摩訶不思議を面白おかしく描く。

 CASE4は、CASE2の相手側の弁護士・箕輪(竹之内豊)が過去に3歳の娘を殴ってしまった事への謝罪だ。娘が発する奇妙奇天烈な言葉と決めポーズに笑ってしまうが、この言葉が後々作品の重大なキーワードとなる。

 そして、ハードルが上がりに上がったCASE5は映画撮影で起こしてしまった肖像権侵害トラブルだ。この神社の撮影シーンは「ウルヴァリン:SAMURAI」に引き続き芝・増上寺である。トラブルは日本とマンタン王国という国家間の国際問題にまで発展し、謝罪に行ったはずのスタッフや大臣が更なるトラブルを巻き起こす。国によって違う言葉の意味や風習やしきたりがトラブルの原因となる小ネタの数々が面白い。失言大臣の行動と発言は、過去にお偉いさんがやらかしたパロディになっている。ここで注目はマンタン王国通訳・ワクバル(濱田岳)の首から提げたカメラ姿を見ると、「地獄の黙示録」でデニス・ホッパーが演じた報道写真家を思い出した。

 最終章CASE6は、黒崎譲の誕生秘話を描きながら、天狗状態になってしまったラーメン業界をチクリと風刺しながら、黒崎譲が謝罪センターの黒崎所長になるまで成長過程が描かれる。何気にEXILEMATSUがおいしい役を演じている。

 謝罪をテーマにした「謝罪の王様」は、ここ数年に起こった事件やゴシップネタを徹底的に風刺&パロディ化しつつ、虚構と現実の狭間も行き来しながら最終的に大嘘を突き通して、観客の予想を超えた地点に着地する。嘘もここまで突き通せば文句のつけようも無い。

 そして6つのドラマは時系列が微妙にずれていて、所々に登場人物が絡み合う仕組みとなった仕掛けも実に上手い。浮き足立つドラマを客観的な視点で説明する典子のナレーションも効果的だ。そしてドラマを牽引する主人公を演じた阿部サダオのハインション演技と、対照的に生い立ちで演じる粘着系演技が上手い。舞台出身俳優だけに引き出しの多さには驚くばかりである。口八丁手八丁でトラブルを回避する黒崎所長を見ていると、往年の「クレージー」シリーズ植木等を思い出すくらいだ。

 とても完成度の高い作品であるが一点だけ不満が残った。それは、とって付けたようなE-girlsEXILEをフィーチャーしたエンドムービーだ。一見、インド映画=ボリウッド映画でお馴染みのダンスシーンを思い出すが、映画の何処に出ていたかも判らないE-girlsたちが大挙して出演するエンドムービー「ごめんなさいのKissing Youは、彼女たちのプロモーションビデオを見せられているようで違和感を持った。そんな事で幕引きで失敗するものの、作品自体は非常に満足度は高い。

 そして本作は、監督、脚本を担当した「中学生円山」、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の脚本に続き、絶好調の宮藤官九郎の勢いと才能を痛感する作品となった。

   

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