映画「アルゴ」@よみうりホール
客席はほぼ満席。試写会場入場前にカメラチェック&身体検査、上映中には1階席と2階席両端に警備員が観客を監視する厳重な試写会となった。


映画の話
1979年11月4日、テヘラン。イラン革命が激しさを募らせ、その果てにアメリカ大使館を過激派グループが占拠し、52人もの人質を取るという事件が起きる。パニックの中、アメリカ人6名が大使館から逃げ出してカナダ大使の自宅に潜伏。救出作戦のエキスパートとして名をはせるCIAエージェントのトニー・メンデス(ベン・アフレック)は、6名が過激派たちに発見され、殺害されるのも時間の問題だと判断。彼らを混乱するテヘランから救出する作戦を立案する。しかし、それは前代未聞で大胆不敵、そして無数の危険が伴うものだった……。
映画の感想
俳優のベン・アフレックが1979年に起こったイランアメリカ大使館人質事件を親切丁寧に監督した力作だ。幕開けは時代設定に合わせ、昔懐かしい70年代に使われていたワーナー・ブラザーズのロゴマークから良い感じである。物語冒頭にイランの歴史と事件の背景を記録映像や写真を使い、観客に事件の概要を理解させた上で物語がスタートするので、事件について予習することがない親切な導入部を経て、あっという間に観客は事件の真っ只中に放り込まれる構成が実に巧みだ。アメリカ大使館を取り巻くイラン人の抗議デモ隊は、塀や門を破り大使館内に雪崩れ込む。多くの大使館職員が人質となる中、6人のアメリカ人職員が大使館から脱出して、カナダ大使公邸に逃げ込む。八方塞がりとなったアメリカ国家はCIA人質奪還のプロフェッショナル、トニー・メンデスを招集する。ここまで20分近く異常な緊張感が続き、やっと主役のベン・アフレックの登場である。今回は長髪に髭面で若い時のチャック・ノリスのような風貌である。
以下ネタバレ注意
CIAは早速、様々なアイディアを出しあい6人の脱出計画を練るが、良案が出ないまま平行線を辿る中、メンデスがテレビで放送していた「最後の猿の惑星」
の中でシーザーの特殊メイクを施したロディ・マクドォールの姿を見て、とんでもないアイディアを考えだす。メンデスが「猿の惑星」シリーズで特殊メイクを担当したジョン・チェンバースと接触し、彼に人質奪還作戦への参加を要請する。ここでチェンバースの名前に「オーっ!」と反応してしまう方は立派な映画マニアである。ここから作品は緊張感をガス抜きするように、コメディ的な演出が冴え渡り、チェンバース役のジョン・グッドマンと、レスター役のアラン・アーキンのトボけた演技が実に心地よい。チェンバースの登場により作品に更なるエンジンがかかり加速を始める。
メンデスの打ち出した作戦は「偽映画の制作を発表して、6人のアメリカ人を映画スタッフに仕立て上げ、イランから出国させる」と言う奇想天外なアイディアで、周りのCIAから反対されるものの、選択肢が無く、やもえなくメンデスの作戦にGOサインが出される。メンデスはチェンバースと共にレスターをプロデューサーに仕立て上げて作戦に参加させる。そして中東がロケ地となる「アルゴ」と言うZ級SF映画の脚本を1万ドルで買い叩き、製作発表記者会見を開き、マスコミを利用して偽映画を大々的にお披露目することを成功させる。そしてメンデスは単身イランに入国して、カナダ大使公邸に身を潜める6人のアメリカ人と接触する・・・。
ベン・アフレックにとって本作は「ザ・タウン」
に続く監督3作目の作品である。前作「ザ・タウン」もなかなかの力作だったが、役者としてのアフレックが出しゃばり過ぎて鼻についたが、本作のアフレックは裏方に徹しながら、物語を牽引する主人公を真面目に演じていて好感を持った。今回は実話であり、物語はテヘランの占拠された大使館、カナダ大使公邸に身を隠すアメリカ人たち、人質奪還作戦本部、偽映画製作チームといった複数のパートが同時進行で描かれるわけで、演出者の力量が露呈するのだが、アフレック監督は全てのパートをバランス良く描ききった。イランパートの半端ない緊迫感も見事であり、偽映画チームの笑いを絡めた脱力具合も上手い、作戦に振り回される作戦本部パートも良い。かなり複雑な構造を持った作品をここまで丁寧に仕上げてくれると文句のつけようもない。
特にクライマックスは絶品である。イランの空港から出国する6人のアメリカ人が直面する困難を、畳み掛けるサスペンスで勝負に出る。チケットカウンターのハラハラに続き、出国ゲートで待ち構える軍人たちの厳重な警備と、何重にもサスペンス演出を張り巡らさせて観客をドキドキさせる。何とか飛行機に乗り込んでも、まだ派手なサスペンスを用意する監督のぬかりのない演出から、脱出成功の安堵までを丁寧に描き切った監督の演出力には拍手を送りたい。若干、クライマックスのシチュエーションがケヴィン・マクドナルド監督「ラストキング・オブ・スコットランド」
に似てしまったが、実話の行くつく先は似てしまうのだろう。物語はアメリカ側のハッピーエンドで幕を閉じるが、個人的にはイラン空港の警備にあたっていた兵隊たちの処分が気になってしまった。それにしても実話という制約がある中で、素晴らしいエンタメ作品に仕立てあげたベン・アフレックの演出力に感服した。
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映画の話
1979年11月4日、テヘラン。イラン革命が激しさを募らせ、その果てにアメリカ大使館を過激派グループが占拠し、52人もの人質を取るという事件が起きる。パニックの中、アメリカ人6名が大使館から逃げ出してカナダ大使の自宅に潜伏。救出作戦のエキスパートとして名をはせるCIAエージェントのトニー・メンデス(ベン・アフレック)は、6名が過激派たちに発見され、殺害されるのも時間の問題だと判断。彼らを混乱するテヘランから救出する作戦を立案する。しかし、それは前代未聞で大胆不敵、そして無数の危険が伴うものだった……。
映画の感想
俳優のベン・アフレックが1979年に起こったイランアメリカ大使館人質事件を親切丁寧に監督した力作だ。幕開けは時代設定に合わせ、昔懐かしい70年代に使われていたワーナー・ブラザーズのロゴマークから良い感じである。物語冒頭にイランの歴史と事件の背景を記録映像や写真を使い、観客に事件の概要を理解させた上で物語がスタートするので、事件について予習することがない親切な導入部を経て、あっという間に観客は事件の真っ只中に放り込まれる構成が実に巧みだ。アメリカ大使館を取り巻くイラン人の抗議デモ隊は、塀や門を破り大使館内に雪崩れ込む。多くの大使館職員が人質となる中、6人のアメリカ人職員が大使館から脱出して、カナダ大使公邸に逃げ込む。八方塞がりとなったアメリカ国家はCIA人質奪還のプロフェッショナル、トニー・メンデスを招集する。ここまで20分近く異常な緊張感が続き、やっと主役のベン・アフレックの登場である。今回は長髪に髭面で若い時のチャック・ノリスのような風貌である。
以下ネタバレ注意
CIAは早速、様々なアイディアを出しあい6人の脱出計画を練るが、良案が出ないまま平行線を辿る中、メンデスがテレビで放送していた「最後の猿の惑星」
メンデスの打ち出した作戦は「偽映画の制作を発表して、6人のアメリカ人を映画スタッフに仕立て上げ、イランから出国させる」と言う奇想天外なアイディアで、周りのCIAから反対されるものの、選択肢が無く、やもえなくメンデスの作戦にGOサインが出される。メンデスはチェンバースと共にレスターをプロデューサーに仕立て上げて作戦に参加させる。そして中東がロケ地となる「アルゴ」と言うZ級SF映画の脚本を1万ドルで買い叩き、製作発表記者会見を開き、マスコミを利用して偽映画を大々的にお披露目することを成功させる。そしてメンデスは単身イランに入国して、カナダ大使公邸に身を潜める6人のアメリカ人と接触する・・・。
ベン・アフレックにとって本作は「ザ・タウン」
特にクライマックスは絶品である。イランの空港から出国する6人のアメリカ人が直面する困難を、畳み掛けるサスペンスで勝負に出る。チケットカウンターのハラハラに続き、出国ゲートで待ち構える軍人たちの厳重な警備と、何重にもサスペンス演出を張り巡らさせて観客をドキドキさせる。何とか飛行機に乗り込んでも、まだ派手なサスペンスを用意する監督のぬかりのない演出から、脱出成功の安堵までを丁寧に描き切った監督の演出力には拍手を送りたい。若干、クライマックスのシチュエーションがケヴィン・マクドナルド監督「ラストキング・オブ・スコットランド」
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この記事へのコメント
離陸しているのに革命防衛隊が執拗に追跡してきて緊張感に溢れていましたね。
私は本作で描かれた出来事を知らずに見たために、クライマックスは恐怖で体が硬直状態になり、脱出成功時には安堵の涙が出るほど感動しました。
ゴールデングローブ賞、ドラマ部門作品賞受賞という納得のクオリティの作品ですね。