映画「宇宙兄弟」@東商ホール
映画の話
子ども時代に、宇宙飛行士になることを誓い合った兄弟ムッタとヒビト。時は過ぎて2025年、弟ヒビト(岡田将生)が夢をかなえて宇宙飛行士となった一方、兄ムッタ(小栗旬)は会社を解雇され意気消沈していた。互いに違った道を進んでいた兄弟だったが、弟からの連絡をきっかけに兄はかつての夢を実現させるべく再び宇宙飛行士という目標に向かって進み始める。
映画の感想
話自体は面白いが、2025年と言う時代設定がまったく生かされていない設定が駄目だ。映画という物は、いかにして観客に虚構を信じ込ませる事が大前提であると私は思うが、本作は未来の話なのに建物や家電製品といった背景や大道具、小道具がまるっきり現代のままなのは観客を舐めきっているし、説得力が無い。SF心の無いスタッフ作った駄目映画の典型例だろう。
物語は兄弟の生い立ちから、ヒビトが月に向かうロケットが発射されるまでが第一部と考えると、ムッタがJAXAの試験に受かり、実地訓練を受ける話が第二部みたいな感じで展開するが、JAXAの密閉空間BOXの中に設置してあった電子レンジに至っては、私が自宅で使用している三菱製電子レンジとまったく同じ物が置いてあったのには唖然とした。「これって、2025年だよな・・・」と頭の中に?マークが一杯になってくる。
以下ネタばれ注意
宇宙飛行士訓練生が密閉空間で長期間共同生活を送る訓練は、以前テレビで紹介されていて見たことがあるが、映画と同じようなパズルや共同作業を行い人間性や協調性などを見極める訓練で、本作でも同じような訓練が描かれるが、妙にあっさりしているように感じた。あんな空間に居れば、楽しみと言えば食事位と思うのだが、本作で食事シーンは一回だけで物足りない。
そこでグループの調和をあえてぶち壊す任務が書かれた“グリーンカード”が登場する、その任務を行うのがムッタだ。任務の内容は割愛するが、本作の場合は表面的に役者が怒る演技で表現されるが、もっと時間をかけて南極観測隊が異星人に体がのっとられる「遊星からの物体X」のように、グループ内で疑心暗鬼に陥り、メンバー同士のはらの探りあいの様な展開に膨らませられたと思うと残念である。いい役者が揃っているのに、役者の内面の演技を引き出せない演出に苛立ちさえ覚える。
ムッタの密閉空間BOXと並行して、月面着陸したヒビトのエピソードが描かれるが、この月面シーンも科学的に見るとイージーである。例えば月面を走行する車が登場し、車のタイヤが月面の石や砂を撒き散らしながら走行していたが、月面の重力であれば撒き上がった石や砂は、そのまま空中に浮き上がり浮遊する筈であるが、本作はタイヤから白い煙みたいな描き方で誤魔化されているのも気に入らない。その後、月面車はクレーターに落下し大変な事になるが、ここもおかしいと思う。映画では月面車が急激にクレーターに落下したが、本当だったら月面車は緩やかに落下すると思う。本作にJAXAが協力していたようだが、制作に宇宙科学アドバイザーは居なかったのだろうか?一応、未来の宇宙を描いているのだから、もっとディティールに気を配ってほしい。
そして、月面クレーターに落下したヒビトの描き方も雑である。太陽に遮られたクレーター内の気温はマイナス60度と言っていたが、ヒビトの宇宙服内では顔に霜が付く位で、本人に低体温症や凍傷など体にダメージがあると思うのだが何も無かったようだ。さらに一番酷いのは、クレーターに落下したヒビトはどうやって救出されたのだろうか?映画のクライマックスとして観客が一番気になるポイントを、本作はバッサリと割愛してしまった、これは酷すぎる。もうクライマックスの放棄としか言いようがない。ラストは駆け足状態のダイジェストになっていたが、あれでいいのだろうか?イージーな演出は映画全体にも言える。ムッタとヒビトが子供時代にJAXAの施設でレクチャーを受ける時の説明員を堀内敬子が演じていたが、初めに登場した時と、20年後位の2025年がまるっきり老けていないのも変だ。
散々駄目だしをしたが一点だけ褒めたい、ロケット発射シーンだけは素晴らしかった。ロン・ハワード監督「アポロ13」の発射シーンも素晴らしかったが、本作のロケット発射シーンはCG技術の進歩により、アメリカ映画に負けない位のリアルな発射シーンが作り出された事は良い。「アポロ13」と言えば、映画の中でもトム・ハンクスのリアクションが取り上げられていたが、もう一点「アポロ13」ネタがあった。ラストのダイジェストに一瞬映る堤真一の着ている白いベスト姿は「アポロ13」でエド・ハリスが演じた飛行主任ジーン・クランツへのオマージュだろう。まぁ、こんな細かいディティールに拘るのなら、もっと時代設定に拘ってほしかった。本作の監督は「木を見て森を見ず」タイプの監督なのだろう。
それから、ダイジェストの中でムッタと共にロケット発射を見守る老人の正体が判明する。彼の座っていたディレクターチェアには「Buzz Aldrin 」と書いてあった。彼はアポロ11号で人類初の月面着陸した人物エドウィン・オルドリン本人だったみたいだ。
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