映画「わが母の記」@よみうりホール

 客入りは1階席は満席、2階席は9割くらい、客年齢層は幅広い。

   

 映画の話
 昭和39年。小説家の伊上洪作(役所広司)は実母の八重(樹木希林)の手で育てられなかったこともあって、長男ではあるが母と距離をとっていた。しかし、父が亡くなったのを機に、伊上は母と向き合うことになる。八重もまた消えゆく記憶の中で、息子への愛を確かめようとしていた

  映画の感想
 きわめてオーソドックスなホームドラマを原田眞人監督流の現代的な演出と、監督の息子・原田遊人が手がけた編集による早いカット割りを使い、多くの登場人物がワサワサと動き、しゃべるのでまったく落ち着かない。この題材は原田監督には合わなかったように感じる。この手のドラマはじっくりと腰を落ち着かせ物語を丁寧に語るのが、伝統的な松竹映画のカラーと私は思うのだが、本作は原田監督の色が強すぎて松竹作品として見ると異色な作品と感じた。

 まぁ長い年月の物語を2時間弱で描かなければならないので、駆け足になってしまったのは否めないが、台詞で言って映像として描かないシーンが多いのと、居ない人物をネタに登場人物たちが勝手に盛り上がってしまうシーンがあるのは駄目である。映画というものは小説と違って、絵として見せるのが命と思う私にとっては、台詞だけのシーンや、居ない人物の話には付いていけない。最低限、台詞で語られる主人公が少年時代に体験した、親に対する悲しい思い出は映像にして観客の情に訴えるべきであったように思う。特に冒頭の印象的な主人公の母親に対する思いを、ワンシーンで描いたファーストショットが効果的だっただけ、もっと少年時代のパートを描いて欲しかった。

 以下ネタばれ注意

 それから後半、痴呆が始まった祖母が徘徊して行方不明になるエピソードが描かれるのだが、トラック野郎が集うドライブインに紛れ込んだ婆ちゃんが、息子に会うためにトラックに乗せて貰い、探しに来た孫と入れ違いになってしまうシーンはもったいない。せっかく活劇として一番面白く描けるシーンを原田監督は割愛してしまった。この手の演出に長けていた故・伊丹十三監督であれば一番力を入れたシーンであろう。その為に婆ちゃんを見つけた孫が「大変だったんだから・・・」と父親に嘆く台詞にまったく重みが出ないのは致命傷である。

 そんな中、婆ちゃんを演じた樹木希林の演技は素晴らしい。彼女は70年代からTBSドラマ「寺内貫太郎一家」や日本テレビドラマ「きまぐれ天使」などで、老婆演技をしてきた人物だけに、本人が本物の実年齢になり、小手先だけではない幅のある老婆の演技は彼女の到達点であろう。それから、婆ちゃんの若かれし頃を実娘内田也哉子の起用と、婆ちゃんの世話係を演じたハロプロアイドル真野恵里菜の意表をついた使い方も上手かった。

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この記事へのコメント

rose_chocolat
2012年04月27日 17:49
真野恵里菜ちゃんよかったですね。出番は少なかったですがインパクトありました。彼女の歌も時々聞きますけど表情いいです。

masalaさんはこういう行間読む作品って苦手なんだよね? これ割と文芸調なんで、そこのところがふんだんにあったりして。
2012年04月28日 00:07
roseさんへ

おっしゃるとおり、私は行間を読む作業は駄目です。
テレビドラマって、割と丁寧に行間を映像化してくれるのに、何故か最近の映画は行間のある作品が多くて困っています。
真野恵里菜はいいですね。

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