映画「ミケランジェロの暗号」@TOHOシネマズシャンテ1
平日の最終回、客入りは3割くらい、年齢層は高い。
映画の話
ユダヤ人美術商の一家に代々伝わるミケランジェロの絵画をイタリアのムッソリーニに送り付け、優位な条約を結ぶ材料にしたいナチス・ドイツは絵画の強奪に成功するも、贋作であることが判明。一方、本物の絵を隠した一家の息子ヴィクトールは、父親が遺した謎のメッセージを受け取っていて家族の命を守るためナチスと駆け引きをしようとするが……。
映画の感想
物語前半~中盤まで堅苦しい展開に面食らうが、これは後半への仕掛けと伏線であり物語後半、ある出来事をきっかけにナチスをおちょくる痛快演出の連続に自然と笑いがこみ上げる。スリルと緊張感の中に所々に挿入されるナチスおちょくり演出の勢いはとまらずラストのどんでん返しまで実に楽しい。これは主人公を演じたモーリッツ・ブライプトロイのキャスティングによる妙であろう。

モーリッツ・ブライプトロイと言えば「エス」だ。スタンフォード監獄実験を基にしたドラマの中で、ブライプトロイが実験を引っ掻き回す役柄を好演した。本作の主人公はそんなブライプトロイにはまさに適役である。「エス」は実験という名の下で看守と囚人と言う役を与えられた被験者の行動や心理変化が描かれる。そんな中、看守側になった被験者たちが看守の制服を着たことで権力を与えられ、人を支配する欲望と狂気が上手く描かれていた。本作もそんな制服と権力が物語の起爆剤となり、物語後半はコメディと見紛うほどの楽しい作品と変貌する。
以下ネタばれ注意
ユダヤ人と言うことで収容所送りとなった主人公ヴィクトルが、ナチス親衛隊(SS)になってしまった親友スメカルと共にミケランジェロの絵画を入手する為に飛行機で移動中に、レジスタンスの地上からの攻撃により飛行機は山間部に墜落する。乗員はヴィクトルとスメカルを除いて死亡してしまう。ここまでがオープニングで描かれたシークエンスで、物語中盤にやっと物語冒頭と時間軸がつながり、痛快なナチスおちょくり映画と変貌する。
本作のポイントはヴィクトル・カウフマンとルディ・スメカルの関係だ。カウフマン家はウィーンで画廊を営む金持ちで、スメカルはカウフマン家の使用人の息子として育ち、二人は兄弟同然に育った。そんな二人がナチス親衛隊と収容所送りのユダヤ人という使う側と使われる側の力関係が、戦争と言う騒乱に巻き込まれ大逆転してしまう。ナチス親衛隊のスメカルと囚人同然のヴィクトル、圧倒的な力関係の逆転は突然訪れる。レジスタンスのテリトリーに墜落した飛行機で唯一生存したヴィクトルとスメカルは、ヴィクトルのアイディアでお互いの着衣を交換する事で延命を図るが、これはヴィクトルの仕掛けた罠だった。ナチス親衛隊の制服を着たことで権力を手に入れたヴィクトルはスメカルになりきり、ほかの収容所送りなった母親を救うために一世一代の賭けに出る。
ミケランジェロの絵画を巡るドラマはサスペンスの中にシニカルな笑いをちりばめた怪作として仕上がった。淡白な前半~中盤を耐えると、あっと驚く逆転劇に突入しコメディ映画紛いな展開となる。一家代々受け継いだ絵画を守る為に父親が選択する贋作と言う手段、それに振り回されるナチス、ヴィクトルの恋人、贋作を見抜く鑑定士とドラマに適材適所の人物たちが登場し物語は大団円を向かえ痛快などんでん返しが実に気持ちいい。物語に直接戦争を描くシーンや、ナチス総統のアドルフ・ヒトラーは登場しない。そんな中、ヒトラーを崇拝する掛け声「ハイル、ヒトラー」という声を聞いて笑ってしまったのはコメディ映画以外でははじめててあろう。こんな映画、戦中に製作したら関係者は皆処刑されていただろう。本作は地味に公開されているが、この秋一番のダークホース的なお勧め作品である。

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モーリッツ・ブライプトロイがナチスを演じていた作品
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ユダヤ人美術商の一家に代々伝わるミケランジェロの絵画をイタリアのムッソリーニに送り付け、優位な条約を結ぶ材料にしたいナチス・ドイツは絵画の強奪に成功するも、贋作であることが判明。一方、本物の絵を隠した一家の息子ヴィクトールは、父親が遺した謎のメッセージを受け取っていて家族の命を守るためナチスと駆け引きをしようとするが……。
映画の感想
物語前半~中盤まで堅苦しい展開に面食らうが、これは後半への仕掛けと伏線であり物語後半、ある出来事をきっかけにナチスをおちょくる痛快演出の連続に自然と笑いがこみ上げる。スリルと緊張感の中に所々に挿入されるナチスおちょくり演出の勢いはとまらずラストのどんでん返しまで実に楽しい。これは主人公を演じたモーリッツ・ブライプトロイのキャスティングによる妙であろう。

モーリッツ・ブライプトロイと言えば「エス」だ。スタンフォード監獄実験を基にしたドラマの中で、ブライプトロイが実験を引っ掻き回す役柄を好演した。本作の主人公はそんなブライプトロイにはまさに適役である。「エス」は実験という名の下で看守と囚人と言う役を与えられた被験者の行動や心理変化が描かれる。そんな中、看守側になった被験者たちが看守の制服を着たことで権力を与えられ、人を支配する欲望と狂気が上手く描かれていた。本作もそんな制服と権力が物語の起爆剤となり、物語後半はコメディと見紛うほどの楽しい作品と変貌する。
以下ネタばれ注意
ユダヤ人と言うことで収容所送りとなった主人公ヴィクトルが、ナチス親衛隊(SS)になってしまった親友スメカルと共にミケランジェロの絵画を入手する為に飛行機で移動中に、レジスタンスの地上からの攻撃により飛行機は山間部に墜落する。乗員はヴィクトルとスメカルを除いて死亡してしまう。ここまでがオープニングで描かれたシークエンスで、物語中盤にやっと物語冒頭と時間軸がつながり、痛快なナチスおちょくり映画と変貌する。
本作のポイントはヴィクトル・カウフマンとルディ・スメカルの関係だ。カウフマン家はウィーンで画廊を営む金持ちで、スメカルはカウフマン家の使用人の息子として育ち、二人は兄弟同然に育った。そんな二人がナチス親衛隊と収容所送りのユダヤ人という使う側と使われる側の力関係が、戦争と言う騒乱に巻き込まれ大逆転してしまう。ナチス親衛隊のスメカルと囚人同然のヴィクトル、圧倒的な力関係の逆転は突然訪れる。レジスタンスのテリトリーに墜落した飛行機で唯一生存したヴィクトルとスメカルは、ヴィクトルのアイディアでお互いの着衣を交換する事で延命を図るが、これはヴィクトルの仕掛けた罠だった。ナチス親衛隊の制服を着たことで権力を手に入れたヴィクトルはスメカルになりきり、ほかの収容所送りなった母親を救うために一世一代の賭けに出る。
ミケランジェロの絵画を巡るドラマはサスペンスの中にシニカルな笑いをちりばめた怪作として仕上がった。淡白な前半~中盤を耐えると、あっと驚く逆転劇に突入しコメディ映画紛いな展開となる。一家代々受け継いだ絵画を守る為に父親が選択する贋作と言う手段、それに振り回されるナチス、ヴィクトルの恋人、贋作を見抜く鑑定士とドラマに適材適所の人物たちが登場し物語は大団円を向かえ痛快などんでん返しが実に気持ちいい。物語に直接戦争を描くシーンや、ナチス総統のアドルフ・ヒトラーは登場しない。そんな中、ヒトラーを崇拝する掛け声「ハイル、ヒトラー」という声を聞いて笑ってしまったのはコメディ映画以外でははじめててあろう。こんな映画、戦中に製作したら関係者は皆処刑されていただろう。本作は地味に公開されているが、この秋一番のダークホース的なお勧め作品である。

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