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zoom RSS 「恋人たち」@チネチッタ

<<   作成日時 : 2016/02/19 18:49   >>

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 「第70回毎日映画コンクール」日本映画大賞受賞記念上映会で鑑賞した。会場となったチネ9には8割ほどの客入りで、客年齢は高い。

   

   映画の話
 橋梁点検の仕事をしているアツシ(篠原篤)には、愛する妻を通り魔殺人事件で亡くしたつらい過去があった。自分に関心がない夫と考え方が違う姑と生活している瞳子(成嶋瞳子)は、パートの取引先の男と親しくなったことから平凡な日常が変わっていく。エリート弁護士の四ノ宮(池田良)は友人にひそかな思いを寄せていたが、ある日、誤解が生じてしまい……。

    映画の感想

 今の時代に流れる閉塞感を反映したドラマが胸にグサリ刺さる。物語は3組の主人公を用意した群像劇となり、その中心となるアツシのドラマに起承転結で言う「起」は無く、絶望的な状況となった彼の背景はセリフから読み取る仕組みとなり、絶望から再生出来ない自分と相反する世間とのギャップに苦しむ姿が描かれる。

 ドラマは並行して2組の主人公を映し出す。仕出し弁当店で働く瞳子は職場と家庭の往復する人生を送っている。彼女の楽しみと言えば皇室の追っかけと、恋愛小説やイラストを描く、妄想の世界に現実逃避している。そんな彼女がひょんなことから弁当店に出入りする精肉業の男・藤田と知り合い、あっという間に肉体関係となる。

 監督はドラマに登場する人物に生命を与える為に人間の欲望を積極的に描く。瞳子は夫との営みはパンツを下しただけの事務的な物に対して、藤田とは全裸になり関係を結んだ。監督は瞳子が眠っていた女の欲望を取り戻した瞬間をメタファーの様に描いた。その後、瞳子は女の欲望に逆らうことなく、男の元に突き進む。

 そして、もう一人の主人公が弁護士の四ノ宮だ。エリート弁護士として順風満帆に過ごす彼であるが、その裏の顔は、学生時代から思いを寄せる友人・聡への片思いである。妻と息子のいる聡への思いが経ちきれない、同性愛者の四ノ宮の内なる苦しみが描かれる。

   以下ネタバレ注意

 「恋人たち」は一見、何の脈略も無い人々が見えない糸で繋がっている設定になっている。瞳子が働く弁当店の弁当をアツシが食べ、瞳子が出入りするスナックのママが高額で販売する詐欺同然の水をアツシの同僚が買ってしまったり、四ノ宮の弁護士事務所の顧客がアツシであったり、小さな世界観の中で登場人物たちに接点を持たせた。

 物語は3組の主人公を配した事で多種多様なドラマを生み出した。絶望の淵いるアツシの重い物語を補うように、並走する二つの物語が作品のバランスを上手く取った。理不尽な理由で妻を失ったアツシに対して、国は何もフォローなく見放された状態だ。同じようにアツシの義姉も犯罪被害者家族と言うだけで恋人や友人を失う。

 アツシの怒りは国向けられる。犯罪被害者を放置してオリンピックにうつつを抜かす。その国の態度、1964年に開催された「東京オリンピック」の時に突貫工事で作られた、川に建てられた橋げたへと行きつく。橋げたは作りっぱなしで、どれもこれも廃棄寸前となった。まるで国から見放されたアツシと同じように。そんなアツシは見放されていなかった。会社の先輩社員・黒田の親身な態度と言葉は彼にとって唯一の癒しであった。

 川の流れの様に続く人生。3組の主人公は目の前の絶望と格闘し、心の中で折り合いをつけて、少しだけ前進する幕引きに救われる。劇中、締め切られていたアツシの部屋のカーテン。ラストカットでカーテンが全開して入り込む眩しい光の束に、締め付けられた心が解放された。

   

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