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zoom RSS 「天空の蜂」@松竹試写室

<<   作成日時 : 2015/08/09 18:35   >>

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 映画.comさん主催「ハリウッド大作ファン限定独占試写会」に参加した。客席は満席。

   

   映画の話
 1995年夏、愛知県の錦重工業小牧工場から防衛庁へ納品する最新の設備を搭載したヘリコプターが、正体不明の人物によって奪われてしまう。やがて遠隔操作されたヘリは稼働中の高速増殖炉の上空でホバリングを開始し、テロリストが日本全国の原発停止を求める犯行声明を出す。さらに、ヘリ内に子供がいることがわかり……。

   映画の感想
 95年原作で「原発テロ」と言う着眼点と先見性は良い。しかし、2011年3..11に起こった「東日本大震災」を経験して、映画をはるかに超える現実を知った日本人にはいささかタイミングが悪い。仮に本作が3.11以前に製作されていたら、架空の娯楽作として大いに楽しめだろう。

 物語は最新鋭の自衛隊ヘリCH50J=ビッグBが何者かに奪われる。無人のビッグBが原発「新陽」上空でホバリングを続け、燃料が切れる8時間後に原発に落下する。その事を回避する為には「新陽以外の日本全土の原発停止せよ」と犯人が要求してくる。しかし、ビッグBの機内にはビッグBの設計士・湯原(江口洋介)の息子がいたずら半分で乗り込み、救出を求めている。

 ヘリが落下すれば新陽がある福井県を中心に、東京を含む大都市までもが巻き込まれる放射能汚染で人が住めない状態になり、多くの国民の生命が危機にさらされる事になる。タイムリミットは8時間。テロを防ぐために警察、自衛隊、原発関係者、湯原と原発の設計士・三島(本木雅弘)らが一丸となり、テロ犯に立ち向かう姿が描かれる。

 テロ犯によるビッグB強奪に始まり、テロ犯に翻弄される国家と並行して描かれる、ヘリからの子供救出劇、足の捜査でテロ犯を追いつめる老刑事と新米刑事、という前半から中盤の展開はかなりいい。

   以下ネタバレ注意

 しかし、子供がヘリから救出され、刑事が犯人にたどり着き、実行犯が自殺してしまった後は緊張の糸が途切れ、テロの黒幕へと向かう展開からは平凡な展開となり物語が急失速を始めてしまう。物語の軸は真犯人探しと犯人側のテロを起こすまでの背景が描かれ、ビッグBも新陽の上空をホバリングしているだけの背景に成り下がり、存在感が薄くなってしまった事は残念だ。

まず、この手のパニック大作にはビッグBが墜落した仮想シーンを映像化して、観客に恐怖心を植え付ける事が基本だ。本作ではビッグBが墜落した事による放射能汚染が地図上で説明して終わってしまったが、実際にビッグBが墜落して爆発する最悪のパターンを映像で描く事が必要に感じた。

 そのお手本となる作品が75年東映製作「新幹線大爆破だ。爆弾の威力を観客に見せつける為に、冒頭で本物の機関車を爆破脱線させて、その後はミニチュアを使ったイメージショットで複数回、新幹線が爆発するシーンをインサートさせた。この手のハッタリめいた映像が効果絶大で作品のテンションを引き上げたが、現代の映画監督は器が小さすぎて、ハッタリ演出が出来ない事が歯がゆい。唯一、ビッグBの墜落を三島の脳内世界で表現したシーンは評価する。他にも物語中盤で犯人死亡、最終的に責任者の辞表など「新幹線大爆破」との類似点も多く感じられた。

 テロ犯を追いつめるドラマと並行して描かれる家族のドラマはちょっと深い。物語冒頭、ビッグBと共に空高く舞い上がる息子を抱きとめる事が出来なかった湯原は、自衛隊の力を借りて再び息子を抱きしめる事が出来たが、三島はいじめが原因で飛び降り自殺をする息子を自分の手で受け止められなかった。その後の人生の明暗を暗示する様な二人の主人公を対比して、コインの裏表の様な関係に設定した所は上手い。三島の息子が苛められる回想シーンが有ればさらに物語に深みが出たかもしれない。

 それから役者のキャスティングと演技も難を感じた。まず湯原役の江口洋介は全体的に良いのだが、息子の救出をテレビ中継で見るシーンが下手過ぎてダメだ。それから佐藤二朗は物語から浮きまくりミスキャストに感じた。一番駄目なのが竹中直人だ。警察庁長官と言う大事な役を故・丹波哲郎のモノマネを確信犯的に演じていて怒りを感じた。その点、犯人役の綾野剛、粘着系刑事の手塚とおるは上手い。この辺は旬の俳優と過去の俳優の落差だろう。

 まぁ、作品は全体的には悪くない。原発と言うタブーに踏み込んだチャレンジ精神は尊重するが、製作時期のタイミングの悪さが惜しまれる佳作である。



天空の蜂 (講談社文庫)
講談社
東野 圭吾

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天空の蜂〜なぜ撃墜しない?
公式サイト。東野圭吾原作、堤幸彦監督。江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、國村隼、柄本明、石橋蓮司、佐藤二朗、向井理、光石研、竹中直人、やべきょうすけ、手塚とおる ... ...続きを見る
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この国に、守る価値はあるのか… ...続きを見る
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2016/08/24 09:19

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