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zoom RSS 映画「ふしぎな岬の物語」@チネチッタ

<<   作成日時 : 2014/10/18 19:29   >>

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 公開から6日目の金曜日の昼間。407席のチネ11には、シルバー世代を中心に30〜40名位と閑散とした客入りだ。

   

   映画の話
 海と花畑に囲まれた心休まる里、その岬の突端にあるカフェ「岬カフェ」には、店主の柏木悦子(吉永小百合)がいれるコーヒーを目当てに里の住人たちが集まってくる。店の隣に住むおいの浩司(阿部寛)は、何でも屋を営みながら悦子を献身的に見守ってきた。そんな穏やかな日々が営まれていたある日、常連客の娘で音信不通だったみどり(竹内結子)が数年ぶりに帰郷するが……。

   映画の感想
 吉永小百合初プロデュース作品と言う本作は、正に吉永ブランドを壊さない保身的な作品だ。物語は実際にある千葉県の岬にある喫茶店をモチーフに創作したドラマであり、吉永演じる悦子の経営する岬の喫茶店に集まる人々の人間模様が描かれる。あらすじだけを見ると、一見面白そうな物語であるが、主人公が吉永小百合である事で、そのブランドが邪魔してしまい、破綻する事ない生温いドラマに仕上がってしまった。

 まず、本作には悪い奴が出てこない。どいつもこいつも良い人ばかりで面白みに欠ける。唯一、アウトロー的な存在の阿部寛演じる浩司でさえ、吉永の前では彼女を触る事の出来ない情けない純情男になってしまう。だいたい、この映画の吉永の年齢設定は何歳なのだろうか?悦子の甥っ子役の阿部寛が現在50歳なので、悦子は推定60歳前後なのだろう。そんな還暦を迎えたおばに、一方的に恋心を抱く浩司の存在が本作のポイントとなるが、悦子と浩司の関係がイマイチ見えてこない。

   以下ネタバレ注意

 それもそのはずだ。二人の関係は物語の最期の最期で、浩司の生い立ちが悦子の口から独白される。しかし、物語の一番大事な所を吉永の下手なセリフだけで説明するので、観客にイメージが伝わらない。何故、本作は回想シーンを使わなかったのだろう。私は野村芳太郎監督の砂の器」(74)が大好きである。主人公の悲しい生い立ちをセリフを使わず、映像と音楽だけで壮大に描いた回想シーンは日本映画史上屈指の名シーンである。そこまで壮大な回想シーンは必要ないが、これまた回想シーンが上手い山根成之監督の続 愛と誠」(75)の高原由紀の生い立ちの独白位の回想シーンは作れたはずだ。映画を安く仕上げようとすると、映画の最重要シーンが本作の様な無残な結果に終わるだけである。

 まぁ、それにしても本作は東映配給作品でありながら松竹カラーを感じる。まず悦子を30年間片思いをしてきたタニ役を「おとうと」(10)で吉永の愚弟を演じた笑福亭鶴瓶に始まり、笹野高史、米倉斉加年と言った山田洋次監督作品の名わき役が登場し、更に撮影監督は「学校」(93)以降の山田洋次監督作品を多く撮ってきた長沼六男だ。きっと吉永の意向でこの面子が揃ったのだろう。

 当たり障りのないドラマが続く中、幕引きで出戻り女・みどり(竹内結子)から衝撃的な告白がされる。なんと純情男の浩司がみどりを妊娠させて、出来ちゃった結婚をするというのだ。いつの間に浩司とみどりはそんな関係になったのだ!ちゃんとそのシーンを描いてくれないと納得できないぞ!

 納得出来ないと言えば、悦子が大沢(井浦新)から貰ったコーヒーカップも、泥棒が割ってしまい、悦子はあんなに悲しんだのに、再び大沢と再会した時にコーヒーカップの話はスルーときたもんだ。悦子の気持が全く読み取れない。だいたい、泥棒と遭遇して「泥棒さん」と呼んでしまう悦子の肝っ玉も大したもんだし、泥棒も「泥棒さん」と呼ばれて受け入れてしまっては、完全に泥棒の負けである。まるで「サザエさん」のエピソードを見る様な間抜けな展開に失笑するしかない。

 監督は八日目の蝉」(11)で手腕を発揮した成島出だ。絶好調が続く成島監督であるが、流石に日本を代表する大女優の前では牙を抜かれたオオカミ状態だったのだろう。阿部寛の絡むシーンの活き活きとした演出が、吉永が絡んでくると、とたんに駄目になる。成島監督も吉永の前ではYESマンになるしかなかったと思われる。

 本作は第38回モントリオール世界映画祭で、審査員特別大賞、エキュメニカル審査員賞を受章した事が大々的なニュースとなったが、その陰で監督賞を受賞したそこのみにて光輝く」(14)の方が、どう見ても作品クオリティが格段と高い。本作に二つも賞を受賞させた審査員の資質に疑いを感じる。トータルで考えると本作は吉永小百合ファン以外には全くお勧めできない作品である。その証拠に劇場の客入りの悪さが全てを物語っている。

   原作本   
   

   サントラ盤
   
 

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タイトル (本文) ブログ名/日時
ふしぎな岬の物語/優しさあふれる人間ドラマ
原作は森沢明夫の『虹の岬の喫茶店』。それを『孤高のメス』や『八日目の蝉』の監督・成島出と主演・吉永小百合の企画により映画化した人間ドラマだ。岬の村の住人を阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶、笹野高史といった実力派俳優が演じている。モチーフとなった喫茶店は実際に千葉県鋸南町・明鐘岬に実在し、そのため千葉県内各所を中心に撮影が行われたという。 ...続きを見る
MOVIE BOYS
2014/10/19 23:14
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公式サイト。英題:Cape Nostalgia。森沢明夫原作、成島出監督、吉永小百合企画・主演。阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶、笹野高史、小池栄子、春風亭昇太、井浦新、吉幾三、杉田二郎、 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
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[映画『ふしぎな岬の物語』を観た(寸評)]
☆最近、のんびりした作品を見るパワーがなかったのだけど、時間があって偶然見たこの作品、なかなか面白かった。 とある岬の喫茶店に集う人々のほのぼの人間模様の話だが、思ったよりも、その人々のサンプル数が多くて、楽しんだ。 私は、この舞台の岬がどこなのか、見... ...続きを見る
『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッド...
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『ふしぎな岬の物語』
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 『ふしぎな岬の物語』を渋谷TOEIで見てきました。 ...続きを見る
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2014/10/23 07:17
「ふしぎな岬の物語」様々な人生を見届けた先にみた出逢った人たちへ託した想いとその後の事を託す人への想...
「ふしぎな岬の物語」は岬が見えるカフェを営む女性が、さまざまな人との触れ合いを通じてそれぞれの人生を見ていくストーリーである。人生色々な出来事があるけれど、全て良い事 ... ...続きを見る
オールマイティにコメンテート
2014/10/26 15:54
ふしぎな岬の物語 ★★★
人気作家・森沢明夫の小説を基に、のどかな里で小さな喫茶店を営む女店主と、店に集う人々との心温まる交流を描いた人間ドラマ。日本映画界を代表する女優・吉永小百合が『八日目の蝉』などの成島出監督と共同で、映画人生で初めて企画に挑戦。主演の吉永とは初共演となる... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/10/27 19:39
映画「ふしぎな岬の物語」
映画「ふしぎな岬の物語」を鑑賞しました。 ...続きを見る
FREE TIME
2014/11/13 00:26
[映画][☆☆☆★★]「ふしぎな岬の物語」感想
 森沢明夫原作の小説「虹の岬の喫茶店」を、吉永小百合企画・主演、「八日目の蝉」の成島出監督で映画化。千葉県鋸南町を舞台に、岬の喫茶店を経営する女性と、その周囲の人々の悲喜交々を描く。 誤解を恐れず言えば、吉永小百合氏は実に不思議な御仁である。浮き沈みの激 ...続きを見る
流浪の狂人ブログ〜旅路より〜
2014/11/19 19:44

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