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zoom RSS 映画「春を背負って」@イイノホール

<<   作成日時 : 2014/06/13 23:55   >>

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 試写会の客入りは7〜8割位、客年齢は高いが中高生位のお子さんたちも来場している。

   
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   映画の話
 立山連峰で暮らしてきた長嶺亨(松山ケンイチ)は、山小屋を経営する厳しい父・勇夫(小林薫)に反発し都会で暮らしていたが、父が亡くなったため帰郷する。そこで気丈に振る舞う母やその姿を見つめる山の仲間、遭難寸前で父に救われ今は山小屋で働く高澤愛(蒼井優)らと接するうち、組織の歯車として働く今の生活を捨て山小屋を継ぐと決める。

   映画の感想
 日本映画を代表する撮影監督・木村大作剣岳 点の記」に続く監督2作目の作品だ。撮影も兼任した木村大作は昨今のデジタル撮影に反してフィルム撮影を選択した。山を舞台にした作品だけに画面が横長のシネマスコープが適当であるが、製作がフジテレビだけにテレビ放送を想定したのかビスタビジョンで撮影された。

物語は至ってシンプルだ。山小屋を営む父/勇夫(小林薫)の事故死により、都会で会社員として働いていた主人公・亨(松山ケンイチ)が、亡き父の跡を引き継ぎ山小屋の主人になる姿を描いた作品だ。そこには過酷な山の生活と厳しさに加え、人と人のつながりに触れながら、成長する亨の居場所探しのドラマである。木村大作と言えば大自然の雄大な風景の撮影の上手さが特徴だ。そして、雪山での雪中行軍の悲劇を描いた「八甲田山」など、過酷な撮影現場を乗り越えてきた名カメラマンだ。本作も雪山を舞台にした作品だけにスタッフ&キャストの苦労がうかがえる。

 物語は主人公が少年時代の父親との思い出から幕を開ける。父親のイメージを強く観客に刻み込む大事なシーンであるが、どうも父親の強さとやさしさは伝わるがイマイチ印象に残らない。そして、続く主人公の会社のシーンとなるが、このシーンも会社勤めをしたことが無い人が思い描く、典型的なIT会社みたいなシーンで、とても莫大な利益を上げている会社に見えない。特に主人公の上司役の仲村トオルは上下オレンジ色のスーツ姿で、とても敏腕上司には見えない。会社のシーンは、後に山で生きる亨のつまらない現実世界を表現する為に狙った演出であれば凄い。

 物語は父親の事故死の原因が明らかになる。山から滑落した登山者を救う為父が駆け寄り、滑落者と共に落下して岩に頭をぶつけて死亡したという、そのシーンも回想シーンで描かれるが、滑落しながら生存し、父の事故死原因を作った登山者のその後が、セリフで語られるが映像として描かれない。ここは映画として掘り下げられるポイントだ。自分を救うために亡くなった勇夫の家族の元に謝罪に訪れるか、手紙で謝罪するなり、何らかのフォローが有れば映画として盛り上がると思うだけに残念だ。

 主を失った山小屋は閉鎖が余儀なくされるが、亨が「後を引き継ぐ」と言い出し、亨は会社を辞めて山小屋の主となる。と言っても山小屋主人のズブの素人の亨をサポートする形で、勇夫と共に山小屋で仕事をしていた愛(蒼井優)と悟郎(豊川悦司)が一緒に働くことになる。物語は亨、愛、悟郎の三人を中心に構成されて展開する。

 山小屋主人・亨の成長物語となる本作であるが、亨より彼をサポートする愛と悟郎が魅力的に描かれている。演じる蒼井優と豊川悦司が良い演技を魅せる。多分、蒼井優演じる愛は木村監督の中では「アルプスの少女ハイジ」のハイジをイメージしていたように見える。特に愛が山小屋の屋根からダイブするシーンが、ジブリ作品のキャラクターみたいな躍動感溢れるアプローチとなり、思わず「はっ」とさせられた。

 そして豊川悦司の使い方も上手い。亡き父の代わりに亨の父親的な存在となるのが悟郎だ。若い時はとげとげしいイメージのあった豊川も年齢を重ねて角が取れて丸くなり、大らかに亨に接する悟郎の姿は感慨深い。唯一、残念な点は悟郎の過去もセリフでさらりと語られてしまうが、この悟郎の建設会社社長のバブル時代の話も、映像化すると作品に深みが出たと思う。もう一点、勇夫と悟郎の過去のエピソードも回想として映像化していればベターである。

 木村大作監督作品第二弾と期待はして見たが、まだ監督二作目の駆け出しの監督作品である。その為に映画全体は悪くはないが、いささか演出が平凡で淡白である。部分的に良い所もあるが悪い所もあり、後々考えると「あーすれば良かった、こーすれば良かった」と観客に余計な心配をさせては駄目だ。まぁ、流石に木村大作だけに撮影は良かったが、底の浅い演出と言う問題点を残してしまった事は否めない。同じように、池辺晋一郎の書いた雄大なテーマ曲も、どこか「クリフハンガー」のテーマ曲風で精悍さに欠ける事も難点だ。

   以下ネタバレ注意

 そして、映画と言う物は幕引きが肝心であるが、本作は最後に亨と愛がいつの間にか恋愛が成就して「2人の愛の証」とばかりに、「タイタニック」とそっくりな、恋人視点の主観映像で撮影した回転ショットがあるが、あれは勘弁して欲しい。見ている観客が恥ずかしくなる。年寄りの監督が考えだしそうな微笑ましい演出である反面、恥ずかしい幕引きに思わず脱力してしまった。
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
背景に関してはとことんこだわるけれど
いかんせんほかのことに関しては
やはりどこか無理があったのかもしれませんね。
カメラマンとしての木村さんは素晴らしいと思うし
剱岳のときの映像のこだわりが好きだったので
見に行ったという珍しい理由でチョイスしたのですが
その点において満足したものの、結局作品としては
どうだったのこれ?っていう・・・。

レビューでも書いたのですが
日本版「アース」を撮らせたら絶対すごいだろうに。(^_^;)
Ageha
2014/07/06 14:08
Agehaさんへ

コメントありがとうございます。

 観客と言う物は勝手なもので、「名カメラマン・木村大作の監督作品」と聞き、「きっと凄い作品を撮るはず」とハードルを上げてしまいます。と言っても、まだ監督2作目の新人監督です。

 監督の前作「剣岳」は史実を描いた歴史物だけに、余計な登場人物を掘り下げ、肉付けする必要が無かった事に対して、本作は亨、愛、悟郎のメインキャストのキャラクターを、掘り下げて肉付けする作業が必要だったのですが、どうも監督はあっさりとした掘り下げに終始してしまった印象です。ドラマ演出に深みを与える為に監督には、もう少し場数を踏む必要があるようです。
 
 Agehaさんが仰る通りに監督は「アース」など、自然を題材にしたドキュメント物を撮らせたらピカイチだと私も思います。先日テレビで見たのですが、監督は時間を見つけては、カメラとフィルムを持ち出し、自身で車を運転して日本の美しい風景を相当数撮影しているそうです。そんなストックフィルムを含めて、一本のドキュメント作品となる日が来るといいですね。
masala
2014/07/06 18:47

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