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zoom RSS 映画「青天の霹靂」@東宝試写室

<<   作成日時 : 2014/05/22 16:45   >>

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 今回は「Yahoo!映画」ユーザーレビュアー試写会に招かれた、客入りは9割位だ。映画上映後には二人の制作者と観客のティーチインが行われた。



  映画の話
 場末のマジックバーで働く、さえないマジシャンの轟晴夫(大泉洋)。ある日、彼は10年以上も関係を絶っていた父親・正太郎(劇団ひとり)がホームレスになった果てに死んだのを知る。父が住んでいたダンボールハウスを訪れ、惨めな日々を生きる自分との姿を重ね合わせて涙する晴夫。すると、突如として青空を割って光る稲妻が彼を直撃する。目を覚ますや、40年前にタイムスリップしたことにがくぜんとする晴夫。さまよった果てに足を踏み入れた浅草ホールで、マジシャンだった父と助手を務める母(柴咲コウ)と出会い……。

  映画の感想
 映画と言うものは時代と密接している。世の中の景気が良くなってくると、職業映画監督以外の他ジャンルから監督に起用されるパターンが多く見受けられる。その元を辿ると90年代に湧きあがったバブル景気を前後して、多くの監督が生まれた。90年代の花形商売はミュージシャンだった。

 例えば松本隆監督「微熱少年」(87)や、桑田佳祐監督稲村ジェーン」(90)、石井竜也監督ACRI」(96)らが代表的な作品だ。それと並行してお笑い芸人やタレントの映画監督も誕生する。後に“世界の北野”と称される北野武監督がデビューした作品が「その男、凶暴につき」(89)であり、他にも島田紳助監督「風、スローダウン」(91)、竹中直人監督「無能の人」(91)ら、景気の上昇によりスポンサー企業が映画監督以外の人々に出資し多くの映画監督を誕生させた。

 その後、バブルは弾け飛び日本を長く不況の時代に入る。そんな中、お笑い芸人はバラエティ番組に欠かせない存在となり、彼らは花形商売の担い手となる。ブームに乗ったお笑い業界は着々と金脈を積み上げていく。その代表が関西の「吉本興業」だ。松本人志監督「大日本人」(07)を筆頭に、品川ヒロシ監督「ドロップ」(08)、木村祐一監督「ニセ札」(09)ら自社所属タレントを次々と監督デビューさせ、本格的に映画産業に参入してくる。そのブームに便乗したのかは不明だが、遂に関東の大手タレント事務所「太田プロ」からも一人監督がデビューした。それが本作の劇団ひとりだ。

 前置きが長くなってしまったが、ここからが「青天の霹靂」の感想です。「青天の霹靂」は劇団ひとりは自身が書いた原作小説を自身で監督して役者として出演もした作品だ。小説家が自身の作品を監督した人物で有名なのが村上龍がパッと思い浮かぶが、原作&脚本&監督&出演と言う稀なケースは邦画では珍しいのではないだろうか?

 物語は奇術を題材にしながら家族を描いたドラマとなり、幕開けは主人公・春夫(大泉洋)がマジックバーのカウンターで客に見せるでもなく、映画の観客に向けてカードマジックを披露する。ここで凄いのが本作は基本的にマジックは演じる役者自身が吹き替えなしで行い、しかもワンカットの長回しでマジックを披露するのだ。何か冒頭から監督の演出スタイルを見せつける幕開けだ。

 冒頭〜タイトルの文字が出るまでは、春夫のどこまでもついていない負け組人生がリアルに描かれ、観客の心も折れそうなギリギリのラインまで落とし込んだ所で、監督は一発の稲妻を落とす。雷に打たれた春夫は昭和48年にタイムスリップしてしまったのだ。物語はプロローグに当たる現代を経て、一気に40年前の過去へと観客を誘う。しかし、本作は「ALWAYS 三丁目の夕日」の様に過去の郷愁に浸る作品ではない。あくまでも物語の性質上の昭和48年なのだ。その理由は物語が進むうち明らかになる。

では「作品はどうだった?」となるが、96分と言う上映時間と長回しを使い、自分が生まれる前の時代に主人公がタイムスリップして出生の秘密を知る姿を、笑いと涙をバランスよく配合しながら上手くまとめた。奇術という人を欺く題材はそのまま物語全体も最終的に主人公と観客を欺く仕掛けが施されている。大泉洋、柴咲コウら人気キャストを上手く配置し、使いこなした劇団ひとり監督の手腕も見事だ。しかし、難点は劇団ひとり自身が主人公の父親役を演じてしまった事だろう。

 映画「八日目の蝉」ら、役者としてもキャリアを重ね演技も上手い劇団ひとりは、テレビのバラエティ番組「ゴッドタン」のコーナー「キス我慢選手権」でアドリブ演技を披露してきた。悪ふざけから生まれたコーナーであるが、劇団ひとりの変幻自在のアドリブ演技で「キス我慢選手権」は、バラエティ番組の域を超えてしまい映画版が出来るほどの人気コーナーとなった。私も大好きなコーナーであるのだが、あのバラエティ番組で見せる劇団ひとりのあくの強い演技が、本作の正太郎役と重なってしまい手放しで喜べない。

 私の個人的見解であるが、本作の正太郎役は監督以外の俳優が演じて、劇団ひとりは裏方に徹する方が良かったと思う。結局、劇団ひとりはバラエティ番組で自分の才能を無駄使いして、手の内を明かし過ぎてしまった。丁度、手品で言えば「種明しをした状態で芸を披露する」ようなもので何ともバツが悪い。作品の仕上がりが良かっただけに、正太郎役だけがしっくりこない事が非常に残念だった。劇団ひとり監督の次回作も楽しみであるが、次は監督に徹した作品を見てみたい。

   

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
>正太郎役は監督以外の俳優が演じて、劇団ひとりは裏方に徹する方が良かったと思う
そうだね〜。
自分で演じたい気持ちはわかるんだけど、それやっちゃったら見せすぎだと思いました。
rose_chocolat
2014/05/25 20:27

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