新・辛口映画館

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画「謝罪の王様」@よみうりホール

<<   作成日時 : 2013/09/29 00:52   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 19 / コメント 0

 客入りはほぼ満席。読売新聞さん主催の試写会だ。

   

   映画の話
 依頼者たちに代わって謝ることで、彼らが抱える多種多彩なトラブルを収束する東京謝罪センター所長、黒島譲(阿部サダヲ)。ヤクザの車と追突事故を起こし、法外な賠償金の支払いを迫られていた帰国子女・典子(井上真央)は、彼に助けられたのがきっかけでセンターのアシスタントとなる。二人は、セクハラで窮地に陥った下着メーカー社員の沼田(岡田将生)、あるエキストラの起用で外交問題を起こしてしまった映画プロデューサー・和田(荒川良々)など、さまざまな顧客に降り掛かる問題を謝罪で解決していく。

   映画の感想
 ここ数年でここまで笑えた作品は無い。“謝罪師”という架空の主人公を描きながら、社会風刺とパロディで押し通す6部構成のドラマに仕立て上げた。

  映画と言う物はつかみ大事だ。本作のつかみは素晴らしい。どこか伊丹十三監督「タンポポ」を思わせる幕開けとなる。

 まず映画が始まると謝罪センターのCMと、それを見る映画館の観客マナーの悪さをパロディにする。作家の勢いは納まらない。謝罪をテーマに様々なパターンを見せる。悪い例として、映画「クローズド・ノート」の舞台挨拶で沢尻エリカがやらかした「別に・・・」発言を再現し、更に監督の悪口までぶちかますパロディ映像を作り出した。ちょっと古い07年公開作品のパロディなのに、試写会場のよみうりホールは大爆笑だ。1000名以上収容の試写会場での、観客一斉の大爆笑は凄まじいパワーを感じる。観客の心を掴んだ作品はそのままの勢いで突っ走り続ける。

   以下ネタばれ注意
 CASE1〜6に構成されたドラマの幕開けCASE1は、司法書士を目指す帰国子女の倉持典子(井上真央)だ。ヤクザの車を大破させる交通事故を起こした典子は、アメリカ育ちの為に謝り方を知らない。激怒させたやくざと示談する為に登場するのが、謝罪センター所長・黒島譲(阿部サダヲ)だ。ここで注目はヤクザの親分だ。北野武監督「アウトレイジ」シリーズで地味にいい仕事をしてきた中野英雄が本作ではヤクザの親分役だ。謝罪に来た黒崎のヨイショ攻撃で上手く話しを丸め込まれてしまう親分役を、中野英雄が短い出演ながら好演していて「アウトレイジ」ファンを喜ばせる。

 CASE2は、セクハラで訴えられた下着メーカー社員・沼田(岡田将生)だ。軽薄セクハラ男が同じプロジェクトの女性担当者(尾野真千子)にセクハラ行為を繰り返し訴えられる。謝罪失敗を繰り返す沼田に代わり、黒崎所長はあっと驚く方法を使い謝罪する。このシーンのローケションはJR大塚駅近くの空蝉橋(うつせみばし)で撮影された。

 こんな具合に庶民レベルで始まる謝罪ドラマは、どんどんハードルがあがり、CASE3では二世俳優が起こした傷害事件を謝罪する元夫婦の大物俳優(高橋克実、松雪泰子)を描く。子供が起こした事件を親がテレビで謝り、事件を起こした息子本人もテレビカメラに向かって謝る、日本芸能界の摩訶不思議を面白おかしく描く。

 CASE4は、CASE2の相手側の弁護士・箕輪(竹之内豊)が過去に3歳の娘を殴ってしまった事への謝罪だ。娘が発する奇妙奇天烈な言葉と決めポーズに笑ってしまうが、この言葉が後々作品の重大なキーワードとなる。

 そして、ハードルが上がりに上がったCASE5は映画撮影で起こしてしまった肖像権侵害トラブルだ。この神社の撮影シーンは「ウルヴァリン:SAMURAI」に引き続き芝・増上寺である。トラブルは日本とマンタン王国という国家間の国際問題にまで発展し、謝罪に行ったはずのスタッフや大臣が更なるトラブルを巻き起こす。国によって違う言葉の意味や風習やしきたりがトラブルの原因となる小ネタの数々が面白い。失言大臣の行動と発言は、過去にお偉いさんがやらかしたパロディになっている。ここで注目はマンタン王国通訳・ワクバル(濱田岳)の首から提げたカメラ姿を見ると、「地獄の黙示録」でデニス・ホッパーが演じた報道写真家を思い出した。

 最終章CASE6は、黒崎譲の誕生秘話を描きながら、天狗状態になってしまったラーメン業界をチクリと風刺しながら、黒崎譲が謝罪センターの黒崎所長になるまで成長過程が描かれる。何気にEXILEMATSUがおいしい役を演じている。

 謝罪をテーマにした「謝罪の王様」は、ここ数年に起こった事件やゴシップネタを徹底的に風刺&パロディ化しつつ、虚構と現実の狭間も行き来しながら最終的に大嘘を突き通して、観客の予想を超えた地点に着地する。嘘もここまで突き通せば文句のつけようも無い。

 そして6つのドラマは時系列が微妙にずれていて、所々に登場人物が絡み合う仕組みとなった仕掛けも実に上手い。浮き足立つドラマを客観的な視点で説明する典子のナレーションも効果的だ。そしてドラマを牽引する主人公を演じた阿部サダオのハインション演技と、対照的に生い立ちで演じる粘着系演技が上手い。舞台出身俳優だけに引き出しの多さには驚くばかりである。口八丁手八丁でトラブルを回避する黒崎所長を見ていると、往年の「クレージー」シリーズ植木等を思い出すくらいだ。

 とても完成度の高い作品であるが一点だけ不満が残った。それは、とって付けたようなE−girlsEXILEをフィーチャーしたエンドムービーだ。一見、インド映画=ボリウッド映画でお馴染みのダンスシーンを思い出すが、映画の何処に出ていたかも判らないE−girlsたちが大挙して出演するエンドムービー「ごめんなさいのKissing Youは、彼女たちのプロモーションビデオを見せられているようで違和感を持った。そんな事で幕引きで失敗するものの、作品自体は非常に満足度は高い。

 そして本作は、監督、脚本を担当した「中学生円山」、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の脚本に続き、絶好調の宮藤官九郎の勢いと才能を痛感する作品となった。

   

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(19件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
謝罪の王様 : 土下座、ワチャワチャ。
 東電のK前会長やS前社長、こやつらは天下り先でヨロシクやっているわけですよ。こいつらにこそ、本日紹介する作品の主人公である黒島譲が側にいれば、今ほど恨まれることもなか ...続きを見る
こんな映画観たよ!-あらすじと感想-
2013/09/29 21:42
謝罪の王様
2013/09/28公開 日本 128分監督:水田伸生出演:阿部サダヲ 、井上真央、竹野内豊、岡田将生、尾野真千子、荒川良々、濱田岳、松本利夫、高橋克実、松雪泰子 謝るとき、人は誰でも主人公。 [Story]依頼者たちに代わって謝ることで、彼らが抱える多種多彩なトラブルを収... ...続きを見る
★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★
2013/09/30 10:00
和解へと導く魔法。『謝罪の王様』
依頼者の代わりに謝って事態を収束する謝罪師が巻き起こす騒動の数々を描いた作品です。 ...続きを見る
水曜日のシネマ日記
2013/09/30 12:50
『謝罪の王様』 ごめんなさい!
 【ネタバレ注意】 ...続きを見る
映画のブログ
2013/10/01 08:22
劇場鑑賞「謝罪の王様」
わき毛ボーボー、自由の女神… ...続きを見る
日々“是”精進! ver.F
2013/10/01 14:45
謝罪の王様
謝罪の王様@イイノホール ...続きを見る
あーうぃ だにぇっと
2013/10/01 17:08
謝罪の王様
最後の新曲プロモーションビデオのくだりは全くもってイラナイ。 ...続きを見る
だらだら無気力ブログ!
2013/10/02 00:25
謝罪の王様 ★★★★
脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲ、監督・水田伸生のトリオが「舞妓Haaaan!!!」(2007)、「なくもんか」(09)に続いて生み出したオリジナルコメディ。架空の職業「謝罪師」を生業とする東京謝罪センター所長の黒島譲が、ケンカの仲裁から政府を巻き込んだ国家存亡の... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2013/10/02 17:52
『謝罪の王様』
□作品オフィシャルサイト 「謝罪の王様」 □監督 水田伸生□脚本 宮藤官九郎□キャスト 阿部サダヲ、井上真央、竹野内 豊、岡田将生、尾野真千子、       荒川良々、濱田 岳、高橋克実、松雪泰子■鑑賞日 9月28日(土)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyaz... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2013/10/06 08:51
「謝罪の王様」何でも土下座した先にみた謝るハードルを下げたあまちゃんの罪の重さを軽く茶化した不謹慎ス...
「謝罪の王様」は謝罪するなら何でも誤って解決させる謝罪センターが数多くの事案について謝罪して解決してしまうストーリーである。謝るというのは珍しい事ではないんだけれど、 ... ...続きを見る
オールマイティにコメンテート
2013/10/06 23:08
「謝罪の王様」
今思い出しても笑っちゃう程面白かった「謝罪の王様」。謝罪の行為そのものだけでなく、謝罪する側、される側、それをはたで見ている側の心理にまで突っ込んだ所が面白い。謝罪が産み出す波状効果もよくできている。 ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2013/10/07 16:18
「謝罪の王様」粋な社会風刺☆ホロリもあるよ
ねえねが愛してやまない阿部サダヲが主演だから〜〜ということで、ねえねの都合の合う時まで待っていた作品。 評判がすこぶる良いので、期待がちょっと大きすぎたかな・・・ それでも用事を済ませて、18時からの回を観ようとしたら、日曜の夜はなんといっぱい!! ラストの21時からになってしまい、ロビーで3時間も時間をつぶしちゃった。 ...続きを見る
ノルウェー暮らし・イン・原宿
2013/10/08 18:02
[映画][☆☆☆★★]「謝罪の王様」感想
 「舞妓Haaaan!!!」「なくもんか」を手がけた水田伸生(監督)×宮藤官九郎(脚本)×阿部サダヲ(主演)トリオによる最新作。様々な謝罪のテクニックを駆使し、ありとあらゆるトラブルを解決する「謝罪師」の活躍を描く、土下座(?)コメディ。 相当にムチャでぶっ飛ん ...続きを見る
流浪の狂人ブログ〜旅路より〜
2013/10/11 20:11
謝罪の王様
 『謝罪の王様』をTOHOシネマズ渋谷で見てきました。 ...続きを見る
映画的・絵画的・音楽的
2013/10/14 11:12
「謝罪の王様」 (2013 東宝=日本テレビ)
圧倒的な人気のまま「あまちゃん」終了。その喪失感からあまロスなんてことばまで。マ ...続きを見る
事務職員へのこの1冊
2013/10/14 18:05
謝罪の王様
2013年11月3日(日) 19:30〜 TOHOシネマズ日劇2 料金:0円(フリーパスポート) パンフレット:未確認 ヘッポコ 『謝罪の王様』公式サイト フリーパスポート5本目。 ダメだった「舞妓Haaaan!!!」まあまあだった「なくもんか」の脚本、監督、主演トリオの第三弾。 五月蝿過ぎで、大人し過ぎだった阿部サダヲが適度にうざい。 いくつかのエピソードで話が進むが、微妙にクロスオーバーする練れた脚本。 爆笑とまではいかないが、かなり笑える内容だった。 ただ、土下座を超えるもの... ...続きを見る
ダイターンクラッシュ!!
2013/11/04 13:45
土下座の向こう側〜『謝罪の王様』
 ヤバイ筋の方々を相手に、物損事故を起こしてしまった帰国子女・倉持典子 (井上真央)は、「東京謝罪センター」 所長・黒島譲( 阿部サダヲ)に対応を 依頼し、窮地を救われる。典子は黒島の助手となり、センターには次々と依頼 人が訪れ始める。「土下座を越えた謝罪」 とは、如何に?? ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2013/11/05 20:54
謝罪の王様
【概略】 東京謝罪センター所長・黒島譲が、喧嘩の仲裁から政府を巻き込んだ国家滅亡の危機まで、様々なトラブルを謝罪のテクニックを駆使して解決していく。 コメディ ...続きを見る
いやいやえん
2014/09/29 15:52
『謝罪の王様』
謝罪の王様 「謝罪師」が、喧嘩の仲裁から政府を巻き込んだ 国家滅亡の危機まで、様々な事件を 謝罪のテクニックを駆使して解決していく姿を描く... ...続きを見る
cinema-days 映画な日々
2015/10/06 02:05

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
映画「謝罪の王様」@よみうりホール 新・辛口映画館/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる