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zoom RSS 映画「許されざる者」@ヤクルトホール

<<   作成日時 : 2013/09/14 00:16   >>

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 テレビ東京さん主催の試写会だ。客入りは85%くらい、客年齢は高い。

   
  映画の話
 1880年、開拓が進む江戸幕府崩壊後の北海道。人里離れた土地で子どもたちとひっそりと暮らす釜田十兵衛(渡辺謙)だが、その正体は徳川幕府の命を受けて志士たちを惨殺して回った刺客であった。幕末の京都で人斬(き)りとして名をとどろかせるも、幕府崩壊を機に各地を転々と流れ歩くようになり、五稜郭を舞台にした箱館戦争終結を境に新政府の追手をかわして失踪。それから10年あまり、十兵衛に刀を捨てさせる決意をさせた妻には先立たれ、経済的に困窮する日々を送っていた。そこから抜け出そうと、再び刀を手にする彼だが……。

   映画の感想
 多くを語らず行間を読む、私の苦手な作風の上、比較対象となるオリジナル版があると言う、非常に厄介な作品だ。私は公開時にクリント・イーストウッド監督のオリジナル版「許されざる者」(92)を、今は無き松竹セントラル1で見たが、作品の記憶は遠くかなたへと消えてしまった。

 まず、本作は発端となる事件が描かれていない。その事件とは、女郎に「アソコが小さい」と言い笑われて、立腹したならず者の兄弟が女郎の顔を切り刻む事件が発生する。ならず者兄弟が許せぬ女郎たちは金を集め、千円の懸賞金を賭けて兄弟の処刑する者を募るプロットである。その物語の起承転結でいう“起”の部分が、部分的に描かれるものの、一番大事な描写は台詞で説明して割愛してしまった。これでは駄目である。最低でも兄弟が「アソコが小さい」と笑われるシーンと、女郎が決起して懸賞金を集めるシーンは必要あると思う。このシーンが無いせいで、頭では理解しているが、実感を伴わない絵空事のように感じてしまう。

 そして、キャスティングも良くない。幼さの残る忽那汐里が女郎役の上、男のアソコを見て笑うように見えない事も駄目だ。彼女は後のシーンで健気な印象が残るだけに、事件の切っ掛けを作った人物には見えない。この事件の発端を作る人物が同じ女郎役の小池栄子なら、歯に衣着せずズケズケ物事を言いそうな印象でピタリと当てはまるだけに、忽那汐里はミスキャストのように感じた。

 更にキャスティングで言うと、警察署長役の佐藤浩市の役作りは何なんだ?どう見てもあの役は「ギャング・オブ・ニューヨークの中で、ダニエル・デイ=ルイスが演じた役を真似ているにしか見えない。あのひげ、あの衣装と、どう見てもダニエル・デイ=ルイスのコスプレかパロディにしか見えない。

 そして、肝心の主役となる十兵衛役の渡辺謙も中々感情移入し辛い。多く物を語らない人物で、台詞もボソボソと喋る。試写会場となったヤクルトホールは、画面の下にセンタースピーカーが寝た状態で設置されている為に、画面センターから外れた席に座ると、舞台からの反射音とホールの反響音で、渡辺謙が喋る低音の台詞が聞き取れないシーンが多々あった。

 逆に柳楽優弥の役作りは素晴らしい。私は基本的に映画を見る前に事前情報を入れない。その為、キャストは画面を見ながら判別するが、柳楽優弥は最後まで判らなかった。私はてっきり「本物のアイヌの血を引く俳優が演じているのか?」と思わせる位に役になりきっていた。ちょっと「七人の侍」の時の三船敏郎を彷彿させるエネルギッシュな役である。

 全体的に駄目な作品であるが良い所もあった。それは刀の怖さだ。通常の時代劇であれば、刀で相手を斬るシーンでは、体の表面を斬る表現で収まっていたが、本作では刀で斬りかかった力と勢いで、刀の刃が体にめり込んで途中で止まっているリアルな描写が何度もあった。この刀の表現は今までの日本映画無かっただけに評価したい。

   以下ネタばれ注意

 ラストの解釈なのだが、警察署長とその一派が十兵衛を捕まえる為に酒場に集まっている所に、十兵衛本人が乗り込み、所長を含む多くの警官と村人を大虐殺するが、当然相手に反撃にされて、十兵衛は刀で斬られ、銃で撃たれて、瀕死の重症を負ったはずだが、ラストでは世捨て人の様に雪原を彷徨っているシーンが映し出される。しかし、その前の十兵衛の状況を考えると、死んだ霊体が雪原を彷徨っているようにも見えた。このシーンは見た方の解釈の違いで断言できないが、私の答えは死んでしまった十兵衛の亡霊に見えてしまう位の、印象的なラストシーンであるが、時既に遅し。登場人物の誰にも感情移入出来ぬまま映画は終わってしまった。

 トータルで見ると、隠れキリシタンやアイヌ民族などオリジナルには無い題材を盛り込んだが、それが物語にうまく機能しているようには感じられなかったし、この題材は観客に感性を委ねる李監督には不向きだったようだ。もう少し時系列に物事を説明出来る監督が本作に相応しかったように思う。ただひとついえる事は「本作を見ると改めてオリジナル版を見直したくなる」と言うことだろう。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
>忽那汐里が女郎役の上、男のアソコを見て笑うように見えない事も駄目だ。

これは全くその通りですね。冗談でも人を侮辱する女性に全然見えませんよね。
佐藤秀
2013/09/15 23:27
佐藤さんへ

何か忽那汐里の処女性を優先した結果、事件の発端を本作は割愛してしまった様に感じました。
先日オリジナル版を改めて見たら、ちゃんと事件の発端が描かれていました。
この辺が李監督とイーストウッド監督の懐の深さの違いなのか、とにかく残念でした。
masala
2013/09/15 23:42

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