新・辛口映画館

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画「終戦のエンペラー」@一ツ橋ホール

<<   作成日時 : 2013/07/27 19:19   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 7 / コメント 2

 今回は講談社さん主催の試写会だ。客入りは若干空席があるもののほぼ満席、客年齢層は高めだ。今回映画を見て驚いた事は、毎回ピンボケ上映に悩まされていた一ツ橋ホールの映写機が、フィルム〜DLPに変更されたらしく、デジタル上映独特の黒の引き締まった、高精細な映像に進化していた。

   

   映画の話
 1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官としてダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争の真の責任者を探し出すという極秘任務を下す。わずか10日間という期限の中、懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴き出していくボナー。ついに最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる。

   映画の感想
 昭和天皇の戦争責任をアメリカ側から描いた歴史ミステリー作品だけに、日本人には感慨深い作品だ。物語は天皇の戦争責任をマッカーサーから極秘調査任務を与えられたフェラーズ准将の視点で描かれる。物語のサイドストーリーとしてフェラーズが戦前に愛した日本人女性アヤ(初音映莉子)の行方を探る物語が並行して描かれる。

 本作は歴史の1ページを描いた作品だけに結果は判っている。しかし、その詳細を知る日本人は少ないと思う。歴史に疎い私は本作を見て初めて知る事ばかりで驚くばかりである。フェラーズは天皇の戦争責任を判断するために、東条英機(火野正平)、近衛文麿(中村雅俊)、木戸幸一(伊武雅刀)、関屋貞三郎(夏八木勲)ら、天皇の側近と接触し話を聞き、天皇の戦争責任の有無を判断するための外堀を埋める。

 そんな中、天皇の側近を演じた役者がそれぞれいい演技を見せる。自殺未遂を図った東条英機役の火野正平が脱力した演技を魅せる。戦争責任を持論で力説する近衛文麿役の中村雅俊は彼らしい熱弁で観客を圧倒する。生き証人として事実を証言する木戸幸一役の伊武雅刀の絶妙な演技、御製朗唱により天皇の気持ちを代弁する関屋貞三郎。適材適所にいい役者をキャスティングし、各人が印象深い演技を見せる中、やはり先ごろ亡くなった夏八木勲は、本当に亡くなる直前までいい仕事をしたと思わせる名演である。

 本作は実話を基にした作品であるが、フェラーズの恋愛パートは創作なのだろう。実際のフェラーズは学生時代に日本人留学生の一色ゆりと出会い、彼女の紹介で河合道という女性教育者と出会い日本の文化を学んだそうだ。この二人の人物を一人女性に集約してアヤというキャラクターを作り出したと思われる。私が注目するのはアヤを演じた初音映莉子だ。ジャパニーズホラー全盛期に作られたホラー映画「うずまき」でヒロインを演じた、彼女が長い年月が流れて、我々の記憶から消えかかっていた所に突然のハリウッド映画のヒロインに大抜擢には驚いた。

 更に本作を見て一番驚いたのは、天皇陛下が終戦を告げるラジオ放送用に作られた、玉音放送がレコードに録音されたもので、そのレコード盤をめぐり、放送を阻止するために反乱を起こした軍部が、皇居内でクーデターを起こした宮城事件は知らなかっただけに衝撃を受けた。

 映画は歴史のとおりに天皇の戦争責任は追及されることなく幕を幕を引かれるが、白黒をハッキリ付けたがるアメリカ人が、天皇に対してグレーな状態で責任を問わなかった大英断を下したマッカーサーと、彼に任務を与えられにアメリカと日本の架け橋を繋ぐために、日本独特の本音とたてまえを汲み取り、和平の為に全勢力を費やしたフェラーズ准将の行動には頭が下がる思いである。本作の中で一番のクライマックスとなる、マッカーサーと天皇が一枚の写真に収まるシーンを再現したシーンは、自然と目頭が熱くなる感動を覚えた。

 本作はアメリカが作った日本だけに、幾つか気になる点があるものの、全体的に良くできている。全編ニュージーランドロケで作られた日本の風景に違和感も無く、GHQ本部となった第一生命ビルと皇居の距離感や、焼け野原となった街並みの再現は圧巻だ。唯一、フェラーズが足しげく通ううどん屋のシーンだけが違和感を覚える。しかし、歴史の1ページを知る上で重要な作品である事は確かであり、当時の戦争を知る人々をはじめ、多くの日本人に見て欲しい作品である。

 映画「終戦のエンペラー」関連商品
 

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(7件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
映画「終戦のエンペラー」これこそ、邦画で見たかった
映画「終戦のエンペラー」★★★☆ マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ 西田敏行、初音映莉子、桃井かおり 伊武雅刀、羽田昌義、火野正平 中村雅俊、夏八木勲出演 ...続きを見る
soramove
2013/08/10 08:14
劇場鑑賞「終戦のエンペラー」
天皇に戦争責任はあったのか… ...続きを見る
日々“是”精進! ver.F
2013/08/10 20:20
終戦のエンペラー
終戦のエンペラー@ブロードメディア試写室 ...続きを見る
あーうぃ だにぇっと
2013/08/10 20:40
終戦のエンペラー
原題 EMPEROR 製作年度 2012年 製作国・地域 日本/アメリカ 上映時間 107分 原作 岡本嗣郎『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』(集英社刊) 脚本 デヴィッド・クラス 、ヴェラ・ブラシ 監督 ピーター・ウェーバー 出演 マシュー・フォックス/トミー... ...続きを見る
to Heart
2013/08/18 00:54
終戦のエンペラー 象徴天皇となった一つの要因がよく理解できた
【=39 うち今年の試写会5】 岡本嗣郎著「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」を原作として、アメリカで作られた作品(邦画ではないのだ、てことは映画館で気付いた) ...続きを見る
労組書記長(←元)社労士 ビール片手にう...
2013/08/19 09:24
終戦のエンペラー (試写会)
平和のために 耐え難きを耐え 忍び難きを忍んで公式サイト http://www.emperor-movie.jp7月27日公開原作: 終戦のエンペラー/陛下をお救いなさいまし (岡本 嗣郎著/集英社文 ...続きを見る
風に吹かれて
2013/08/19 09:35
終戦のエンペラー
天皇の戦争責任を問うという日本人には禁断の映画なのかと思っていたら、やっぱりアメリカ・ハリウッド製作の映画だったな、といった印象。 マッカーサーが来日したときに、日本兵が背中をみせている所はまあ実際にあったことだし納得出来たが、焼け野原を昭和天皇を乗せた車が進んで行くなか、当時の日本人が天皇に対して背中をみせるなんておかしいのでは? 監督が「真珠の耳飾りの少女」の方だったので期待したのだが、正直がっかり。要求する事は確かに難しいのかもしれないが…。 主人公フェラーズ准将の恋愛話が話... ...続きを見る
いやいやえん
2014/03/04 09:11

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「全編ニュージーランドロケ」やはりそうですか。本作のプロデューサー奈良橋陽子さんは関屋貞三郎の孫。「アメリカが作った日本」というほどではない気がします。
まっつぁんこ
2013/08/10 20:47
まっつぁんこさんへ

私も映画を見ている間はニュージーランドロケとは知らず、「よく出来ている」とのん気に見ていましたが、作品の公式ページに「全編ニュージーランドロケ」と記載されてい驚きました。
奈良橋陽子さんの家系は、更に驚きで息子さんは俳優の野村裕人だそうです。
masala
2013/08/11 00:43

コメントする help

ニックネーム
本 文
映画「終戦のエンペラー」@一ツ橋ホール 新・辛口映画館/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる