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zoom RSS 映画「インポッシブル」@一ツ橋ホール

<<   作成日時 : 2013/06/16 18:09   >>

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 今回私は映画サイト「Gacchi」の試写会に招かれた。客入りは6〜7割くらい。本編上映前に配給元プレシディオの宣伝担当さんから、東日本大震災を経験した日本で本作が上映がされるまでの経緯が語られた。

  

   映画の話
   2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。


   映画の感想
 まず、本作は全ての年齢層が鑑賞可能のレーティング「G」が付けられている。私の見た試写会でも小学生低学年位の女児が来場していた。しかし、その内容は大人が見てもショッキングな描写が多々あり、お子さんの鑑賞にはかなり厳しい作品であり、東日本大震災を経験した方にはかなり辛い内容となっている。その為、作品自体は素晴らしい仕上がりとなっているが、万人にオススメ出来ないのが辛い作品となってしまった。

 物語の描き方は一貫して津波に巻き込まれた家族の視点に統一されていて、多くのデザスター映画で登場する政府や軍隊など登場しないし、物語の根底にあるスマトラ沖地震さえも語られない。あくまでも、リゾート地で突然の津波に飲み込まれた家族が何がなんだかわからないまま、家族の生存を信じながら九死に一生体験を時系列に再現した映像なのだが、そのドラマはノンフィクションの次元を超えた壮絶なドラマに絶句すると共に涙するしかない。

 映画の幕開けはタイに向う家族を乗せた飛行機内のシーンだ。家族の父ヘンリーが書類に目を通しているシーンで何気なく写る「チューリッヒ保険」の書類が後々大事な役割となる。不吉な出来事を予見するようにマリアの手帳から落ちる一枚の紙も津波襲来のシーンで再現されている。そしてタイのリゾート地に到着した家族はホテルで余暇を過ごし、プールでバカンスを楽しんでいる途中に、不意打ちの付くように津波が襲来する。津波の襲来はまるで怪獣が地上に上陸するように、海岸沿いに立ち並ぶ木々をなぎ倒しながら陸地に向い人々を飲み込む。突然の出来事に成す術もなく、津波に飲み込まれた5人の家族は散り散りに流されてしまう。

 物語は母マリアと長男ルーカスの視点から描かれる。離れ離れに津波に流された二人は、流されながら命からがら合流するが、マリアは大怪我を負い、歩くのも困難な状態である。マリアはルーカスの手を借りて安全な場所を求めて歩き出す。その途中、助けを求める子供の泣き声を聞く。自分達の事で頭がいっぱいのルーカスは「子供を見捨てて逃げる」と主張するが、マリアの判断で流木に挟まれて動けない男の子ダニエルを救出する。大木の上で救出を待つ3人の前に現地の人々がやって来て救出されるて、大急手当てを受けて病院に運ばれる。被災者で大混乱の病院に収容されたマリアとルーカスには更なる試練が待ち受けていた。

 視点はマリアとルーカスとバラバラに流された、ヘンリーと次男トマスと三男サイモンに代わる。マリアとルーカスの悲惨な状態から打って変わり軽症で済んだ様な父子は、行方不明のマリアとルーカスの消息を求めて動いていた。ヘンリーは同じ被災者たちの手を借りながら、家族の捜索を始めるが、子供達だけが別の場所へ避難して離れ離れになってしまう。

 本作は簡単に言うと、近年テレビで放送される「九死に一生」再現ドラマと同じジャンルとなるが、そのスケールはテレビとは比べ物にならないクオリティーだ。津波を再現した映像は観客の予想を遥かに超えた衝撃的な物であり、個人の視点で描いたドラマはフィクションでは作りえない壮絶なドラマとなっている。物語中盤で病院内でマリアと離れ離れになったルーカスのエピソードは、S・スピルバーグ監督「太陽の帝国」の主人公の少年が辿る過酷な運命を頭をよぎってしまった。徹底したリアリティーを貫くドラマの中で、唯一、トマスとサイモンが夜の丘で老女(ジェラルディン・チャップリン)と出会うシーンだけが、ファンタジックなエピソードで、彼女は家族の守護霊だったのかもしれない。

 実話なので着地点は見えているが、家族の絆を描いた下手なフィクションより数倍濃厚なドラマに文句の付けようがない。家族の視点のみで全体像が見えなかった津波の被害は、家族が避難する飛行機から見た俯瞰映像で初めて判る仕組みも秀逸である。アカデミー賞にノミネートされたナオミ・ワッツの演技も素晴らしく、中盤以降の寝たきり状態の感情表現と、壮絶なメイクアップに女優魂を感じた。本編が終わり、エンドロールが流れる中、静まり返った試写会場は誰もが同じ思いだったのだろう。エンドロールが終わり湧き上がった拍手の音が、観客から作品への称賛を如実に表していた。

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